公共システム研究室(鳥取大学)

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2004年度 修士論文卒業論文はこちらです)

ゲームの逆推定における誤差項間の系列相関に関する研究
奥本 孝之
 ゲームの逆推定とは,実際に行われたゲームの結果とそのときの説明変数の値から利得と均衡解選択確率を推定する手法である.これにより,多数回繰り返されるようなゲームについては外部者が比較的容易に利得の推定を行えるようになり,相互依存的な状況下にある人々の行動を選択することが可能となった.しかし,この手法では非観測要因が利得に及ぼす影響をIIA特性のある誤差項と仮定しているにもかかわらず,ゲームには利得間で共通の非観測要因が存在すると考えられることから,誤差項間に相関関係が存在し推定バイアスが生じることが懸念される.このことを考慮しえるように逆推定法は改良されてはいるが,そもそも相関関係が存在するか否かは実証されていない.そこで本研究では実験データを用いて相関関係の有無を実証した.その結果,検討した範囲ではゲームの誤差項間に系列相関が存在する場合が多く,系列相関があるにもかかわらずそれを考慮しなければ推定精度が著しく損なわれる可能性があることも明らかになった.


路線バスのサービス水準設定に関する一考察 pdf_icon.gif
藤田 康宏
 路線バスは高齢者や学生にとって必要不可欠なサービスであり、その確保は多くの自治体にとって重要な問題となっている。そこで自治体は、具体的にどの地区にどの程度の水準のバスサービスを維持するかという課題に取り組むことになるが、これまでにサービス水準の設計方法について明確な考え方はない。多くの場合、過疎地域に住む住民は、今までに高い水準でのバスサービスを受けたことが無く、低水準のサービスであってもそれに不便を感じることがなかった。よって、バスサービスの改善に関する具体的なニーズとして表面化しないことがあるがある。また、低水準のサービスの住民は、少しのサービスの向上に大きな効用を得るなど、環境による効用の差が存在する。そこで、本研究では、自家用車利用者の行動を用いて、人々が認識していないニーズをもサービスの設計において取り込んでいくための考え方を検討し、活動の機会を評価基準としたサービス水準の設計方法を示す。


社会資本の共同更新における費用配分に関する研究 pdf_icon.gif
岩倉 幸司
 これまでに蓄積してきた社会資本を効率的に維持管理していくことは今後の重要な課題である.それぞれの管理主体が個別に社会資本を維持管理している場合が多いが,それぞれが管理する社会資本の維持管理を相互に調整し,共同で維持・更新することで全体の費用を削減できる可能性がある.その際,その調整にはそれぞれの管理者の合意を必要とする.本研究では,個別に管理されている社会資本を集合的に維持管理するための合意を確保するための方策として,維持管理に要する費用を配分することが有用であることに着目する.劣化過程に曝された社会資本の維持管理政策の導出としてマルコフ決定過程,費用配分による管理主体の合意可能性の検討として協力ゲーム理論を援用し,これらを組み合わせたモデルを構築することで,共同更新で節減できる費用を主体に適切に配分することで効率的に総期待割引費用を削減するメカニズムを検討する.

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2004年度 卒業論文

社会的連帯と犯罪の抑止構造に関する研究 pdf_icon.gif
片山 保志
 我が国では犯罪の増加が問題となっているが,地方は都市と較べると犯罪が少ない.地方ではコミュニティ活動が盛んであり,住民の間に社会的連帯が形成されている.本研究ではデータを用いて各都道府県の地域貢献活動水準と犯罪認知件数の関係を調べる.また,個人が地域貢献活動の積み重ねを通じて地域住民への愛着を形成し,その結果犯罪の動機が抑制される構造についてモデル化する.そして社会的連帯の犯罪抑止機能と,都市と地方の犯罪環境の相違について分析する.


人口減少経済におけるインフラの補修計画と世代間費用配分方法に関する研究 pdf_icon.gif
端詰 将範
 今後わが国では人口減少に伴う財政難が予想される中で,高度経済成長期に整備されたインフラストラクチャが同時に補修の必要性に直面する.本研究ではマクロ経済の視点から複数のインフラの補修計画と世代間費用配分方法について分析する.人口減少率が大きく,世代間の財政移転コストが大きいときには,長期間をかけてインフラの補修タイミングを時間的に分散させていくことが世代間衡平性を考慮したインフラ管理問題において有用な戦略となる.


地域防災活動におけるリスクコミュニケーションの成立過程に関する研究 pdf_icon.gif
安食 貴志
 自然災害リスクの認知には大きな個人差があり,それらは地域が自主防災活動に取り組む過程で問題となる.本研究では,アンケート調査を通じて鳥取市と米子市の自主防災会におけるリスクコミュニケーションと活動内容の決定過程の実態について把握するとともに,ゲーム理論を応用して防災会長と住民の間の議論の過程を理論的に分析する.そして自主防災会の始動が急務であることが十分なリスクコミュニケーションにとって障害となる場合があることを示す.


第三者による参入を想定した利害調整に関する研究 pdf_icon.gif
島田 香菜子
 公共事業の実施に際しては,関係主体者間の利害対立(コンフリクト)が不可避的に生じる.利害の調整を目的とした明確な主体は存在しないことから,直接の利害関係にない行政機関がその調整の役割を担うことが期待されている.本研究では,調整者がコンフリクトの当事者として参入することで利害の調整を試みる場面を想定する.その下で,参入が調整者に望ましい結果をもたらすのか,その可能性があるとすればどの場面で参入するべきかを理論的に導出するモデルを開発するとともに,コンフリクトの構造と関連付けて分析する.


耐震性能に関する性能発注の契約方法に関する一考察 pdf_icon.gif
野田 亮
 性能発注方式では新技術の採用が容易になる一方で,大規模地震時の性能等を事前に検証することが不可能な新技術が採用される場合がある.また技術や工法,仕様ではなく要求する性能に関して契約が結ばれることによって,受注者が充分な耐震化投資を行わない可能性が発生する.本研究では性能発注方式における契約問題を定式化し,発注者である政府は地震時に依存した報酬と罰金を設定する契約を通じて,受注者である企業の耐震化投資行動に経済的インセンティブを与える必要があることを示す.


情報の非対称性を考慮したバスサービスの運行委託契約に関する研究 pdf_icon.gif
松永 拓也
 規制緩和により不採算路線が廃止されるなか,必要なサービスを確保するための自治体の負担が増大している.自治体が運行委託や補助金投入を行う際,その額に見合うサービスが提供されるようなバス事業者と契約を結ぶことが望ましいが,情報の非対称性に起因する不効率を回避するための適切な契約方法が確立されていないため,現実には結ばれていない.そこで本研究は運行委託契約とバスサービスとの関係をモデル化し,効率的なサービス調達に有効な契約の設計法を検討する.

最終更新:2016-09-28 (水) 16:27:38