公共システム研究室(鳥取大学)

thesis.gif
2001年度 修士論文卒業論文はこちらです)

提携行動と状態変化の相互作用に着目した提携形成問題 pdf_icon.gif
石本 裕亮
 我々が直面する様々な社会問題を解決するに当たって,主体間の提携が不可欠となっている.提携の形成に際しては主体間に利害対立が生じる.その調整には利害対立の構造とその下での提携形成メカニズムについての理解が必要となる.この分析は従来「提携形成問題」として行われてきたが,そこでは,主体の行動が主体をとりまく状態が利得や費用に影響を及ぼすと暗に仮定され,その影響を与件として提携形成行動をモデル化している.しかし,主体の行動も状態に影響を与えており,主体の行動と状態の間には相互依存の関係がある.
 本研究では,この関係を想定した「提携形成問題」を二人確率ゲームを用いてモデル化するとともに,利得構造が提携形成行動に及ぼす影響について分析する.


ドライバーが認識するサービスの質を考慮した道路交通管理の評価手法 pdf_icon.gif
塩谷 直文
 道路の交通管理は,道路を走行するドライバーが享受するサービスの質を考慮しつつ,通過交通量の増加を目指すことなどを目的として行われている.ドライバーが享受するサービスの質は交通量の増加に伴い,速度低下や周辺車両との衝突危険性などの影響により低下する.しかし衝突危険性に伴う不安感やストレスをサービスの質として的確に表現することは困難であるなどの理由から,現在では速度の低下を考慮するのみにとどまっている.そのため,道路を走行中のドライバーは衝突に対する高い緊張感の下での運転を強いられている可能性がある.そこで本研究では,走行速度や衝突危険性といったドライバーの認識に基づく道路のサービス水準評価指標を用いてドライバーの走行便益を定義する.そして道路管理者はドライバーの総走行便益を最大にする交通状態の達成を目標とするという,道路管理者,道路利用者双方の視点に基づいた新しい道路交通管理の方法を提案する.


gra_bar2.gif
2001年度 卒業論文

誤差項の系列相関を考慮したゲームの利得推定法 pdf_icon.gif
藤原 大
 行動結果から利得を推定する方法の一つとして提案されている「ゲームの逆解析法」では各プレイヤーの利得の誤差項間に独立性を仮定しているが,実際には相関性を有している事が多いため推定結果にバイアスが生じる可能性があり,利得の推定精度が低くなる.そこで本研究では,利得の誤差項を,プレイヤーや戦略に共通なシステマティックな部分とそうでない部分に分解する手法を使って,利得の誤差項に相関性が存在することによるバイアスを回避し,より推定精度の高い利得推定法を提案する.


災害保険市場の発展と防災投資の世代間費用配分に関する一考察 pdf_icon.gif
江崎 史昭
 大規模自然災害リスクを管理するため、政府は防災施設を整備し費用を世代間で配分する。一方、将来、災害保険市場が発展すると、家計はより多くの保険を購入し防災投資への支払い意思額が低下する。そのため現在世代は防災投資費用負担が大きくなる可能性がある。本研究では受益者負担の原則に従った防災投資の世代間費用配分が、災害保険市場の状態によってどのような影響を受けるかについて分析する。


リスクの分散可能性を考慮したレベル2地震動の設定法 pdf_icon.gif
木本 歩
 阪神淡路大震災以降,巨大地震に対する設計地震動設定法の確立が緊急の課題となっている.地域社会の維持可能性に着目して提案された既存の設定法では,防災投資による構造物の耐震性向上のみが考慮されているが,極小頻度巨大地震に対しては,防災投資をおこなうだけでなく,保険を導入して分散させることで,より効率的な対策が可能と考えられる.本研究では過去の研究をもとに,保険によるリスクの分散可能性を新たに考慮することにより,地域社会が対応可能な地震規模の上限値を設定する方法論を構築する.


送水管の新設に伴う水道システムの保全性向上の経済評価 pdf_icon.gif
國井 大輔
 送水管の故障や被災を防ぐためにはその保全が不可欠である.しかし,その実施に際して多くの世帯への給水を一旦停止せざるをえない地域では,適切な保全が困難である.このような地域では,既設の送水管と相互連絡が可能な送水管を新設することで保全を可能にする事業が行われている.本研究では,その実例として神戸市の「大容量送水管整備事業」を取り上げ,送水管整備事業がもつ保全性向上のためのプラットフォーム機能の経済効果を評価するモデルをマルコフ決定過程を用いて構築する.


家計の異質性と分権的防災投資に関する一考察
吉里 直樹
 近年,地域の災害危険度に関する情報公開が進んでいる.同時に災害リスク管理に関しても地方による分権的な防災投資と家計の自己責任に基づいた居住地選択が求められている.家計が自身の所得水準と地域のリスクに応じて居住地を選択するとき,高所得者と低所得者の住み分けが進み,それぞれの地域で過剰・過小な防災投資が行われる可能性がある.本研究では中央政府による課税・補助金システムを提案し,社会的に最適な防災投資と人口配分の実現可能性について検討する.


広域バス路線の補助金負担の公平性に関する研究 pdf_icon.gif
鎌仲 彩子
 路線バスの維持のために補助事業を行っている地方自治体にとって財政負担の縮減は大きな課題である.その対策の一つとして,複数の自治体をまたぐ広域バス路線を設定し,関与自治体による共同での補助が考えられる.しかし,その実施には補助費用の負担の公平性が問題となる.本研究では,自治体間で負担に関する合意に達した事例を取り上げ,そこで暗黙に想定されていた公平性の規範を協力ゲーム理論を用いて推定するとともに,妥協を得るためのプロセスについて検討する.


観測データに基づく自由走行速度分布の推定法 pdf_icon.gif
中村 美保子
 自由走行速度とは他の交通の影響を全く受けない場合の速度のことであり,自由走行速度分布は道路のサービス水準を評価する上で必要な情報の一つである.現行の自由走行速度分布は自由走行車の速度のみから推定しているが,車群の先頭に位置する自由走行車は相対的に低速な車両が多いため,過小推定となっている可能性が高い.そこで本研究では,高速車が低速車に追いつき,追従する確率を考慮したモデルを構築し,観測した走行速度分布から自由走行速度分布を推定する方法を提案する.


利水者の契約行動に着目した水融通契約の導入に伴う渇水軽減効果の分析 pdf_icon.gif
森田 浩和
 大規模な水資源開発の実施が困難となる今後においては,利水者間の水利調整が重要な渇水対策となる.現河川法は渇水が発生した際の調整を認めている.当事者間の円滑な合意形成の観点からは,事前の取り決めが有効と考えられる.そこで,本研究では水融通に関する契約制度を設計するとともに,その制度の下での利水者の意思決定を支援するためのモデルを動的計画法とゲーム理論を用いて開発し、これを用いて渇水軽減効果の評価を行う.


過疎地域における生活交通サービスの利便性評価 pdf_icon.gif
渡辺 聡恵
 路線バス事業の規制緩和により,過疎地域の多くではいかにして生活交通を維持可能な形で確保していくかという問題に直面している.その検討に際しては当面自治体が主体となるものと考えられるが,運行形態の変更が住民の感じる利便性に及ぼす影響を的確に把握することは必ずしも容易ではない.そこで本研究では生活交通の維持・改善方策に対して住民が感じる利便性を,比較的簡単な調査に基づき定量的に評価する手法を提案する.


合意形成の場における発言メカニズムに関する研究 pdf_icon.gif
山根 佑司
 近年の公共事業では、住民間での合意を図ることを目的とした会合が開催されるケースが増えている。しかし、同調圧力により全ての住民が真意を発言するとは限らない。したがって、真意を言いやすい会合の運営が必要となるが、運営方策の意義や効果に関する一般的な知見はほとんど蓄積されていない。そこで本研究では、どのタイミングでどの意見を発言するかという住民の発言メカニズムをモデル分析するとともに、いくつかの運営方策を提案し、その有効性を理論的に検討する。

最終更新:2016-09-28 (水) 16:27:38