公共システム研究室(鳥取大学)

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2022年度 修士論文卒業論文はこちらです)

ニュースサイトのコメントを用いた災害に対する社会的関心の抽出~新型コロナウイルス感染症を例として~pdf_icon.gif
田中 哲哉
<要旨>
感染症や大規模な自然災害といった事態に対し政府は早急に様々な政策を講じる必要がある.地域の実情や人々のニーズを把握し政策に反映させることが望ましいが,大規模な社会調査を行うことは困難である.ここで,Web上には日々記事が投稿され,人々が記事に対してコメントをしている実態に着目すると,ニュースサイトのコメントから人々の関心事を把握できる可能性がある.しかし,コメント数は膨大であり,さらにその内容や質は様々であることから,これらの背後にある社会的関心を見つけることは容易ではない.そこで本研究では,コメントに対する人々の賛同に着目し,賛同を考慮したうえで大量のコメントから特徴的な関心を抽出することを試みる.自然言語処理の手法であるBERTを用いて,2020年6月から2021年5月末までの新型コロナウイルス感染症に関する記事に寄せられたコメントで実証する.

中山間地域における乗合タクシーの再評価手法に関する研究pdf_icon.gif
藤本 隆志
<要旨>
中山間地域では,複数の顧客が乗り合うことで少ない運転手数や走行距離で移動サービスの提供ができる乗合タクシーを導入している地域が多い.しかし,その顧客数は減少の傾向にあるため,乗り合いが必ずしも必須ではない状況に向かっている.このため,乗り合いを伴わない代替的なサービスに転換し,顧客の希望の時刻に沿った運行にするとともに目的地までの迂回時間を解消することで利便性を改善することが期待できる.しかし,どのようなタイミングでの転換が有効かは必ずしも自明ではない.また,利便性の向上とサービスに要する運転手数や走行距離の削減とはトレードオフの関係にあり,事業者の判断は容易ではない.そこで本研究では,DEA(包絡分析法)などの方法を活用しつつ,効率性と運転手不足の観点での持続可能性という二つの側面から乗合タクシーを再評価する手法を提案し,代替サービスへの転換が有効となる条件を定量的,実証的に明らかにする.

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2021年度 卒業論文

小型除雪機の地域への割り当て基準の作成方法
岡田 雄太
<要旨>
気候変動の影響により,極端に多い降雪が局地的に生じることが予測されている.また,除雪作業を担う建設業の人手不足の進行で,地方自治体が十分な除雪ができない事態に直面する.そこで,地方自治体が小型除雪機を町内会に貸し出し,除雪の役割を分担することが重要となる.その際には,どのような条件の町内会に何台の小型除雪機を割り当てるかを示した基準が必要になる.そこで本研究では,基準を作成するための数理モデルを混合整数計画法に基づいて構築する.また,鳥取市内の町内会を対象として,クリギングを用いて降雪量を推定した上で実証的に基準を導出する.

貨客混載サービスの費用対効果に関する実証分析
小川 大輝
<要旨>
中山間地域では今後のさらなる利用者の減少に伴って公共交通サービスの持続可能性が継続的に低下すると考えられる.このため,新たな収入を確保するための取り組みとして,旅客の運送と貨物の配達のサービスをあわせて供給する貨客混載サービスの導入を検討している公共交通事業者が増えている.その導入の検討に際しては,先行している事例を参考として貨客混載サービスにどれほどの費用対効果が期待できるのかを概略的に把握することが重要となるが,そのような情報はほとんど得られない.そこで本研究では,実際に中山間地域で貨客混載サービスを実施している地域を対象としてどれほどの費用対効果が期待できるのかについて,車両の運行を再現する数理モデルを用いて明らかにする.

居住意向に着目した総合計画アンケートの分析
小原 諒士
<要旨>
総合計画アンケートでは行政の取り組みに対する住民の重要度と満足度とともに,今後の居住意向もわかる.持続可能なまちづくりのためには,居住意向の高い住民の満足度を維持しつつ,居住意向の低い住民の満足度が高まるような取り組みを優先する必要がある.アンケートの分析では,分野や住民の属性ごとに重要度と満足度の平均点を算出することが多く住民の特徴を総合的に把握しづらい.そこで,マーケティングにおいて顧客を分類する手法を用いて,居住意向の低い住民の特徴を抽出し,優先すべき住民層や分野を明らかにする.

ニュースサイトのコメントを用いた生活に関する不満の抽出
田中 皓稀
<要旨>
疫病や自然災害といった有事は人々の生活に様々な影響を与えるが,その実態を迅速にかつ広域的に調査することは難しい.ネット上には日々さまざまなコメントが書き込まれているため活用できる可能性がある.一方で,自由形式で書かれた意見の質および量は様々であり,効率的に整理する必要がある.そこで,本研究では,不満とそれを構成する用語に着目し,sentence BARTと不満調査データを用いて大量のデータから不満及びその内容を抽出する方法を開発する.

共助活動への協力意向に影響を与える個人的・組織的要因の分析
中土 朋哉
<要旨>
中山間地域では生活サービスの撤廃に伴い,住民による送迎支援や買い物代行といった新たな共助活動を行う必要性が高まっている.それに伴い,自治体はカネやモノといったハード面の支援を主に行っている.一方で,共助活動の実現可能性を高めるものには住民のスキルや態度といった個人的要因や集落の雰囲気や組織体制といった組織的要因が関与しており,それらに対するソフト面の支援も重要である.しかし,各要因が共助活動に対してどのように影響を与えているのかはわかっていない.そこで,共分散構造分析を用いて共助活動の実現可能性を高める要因および,各要因と共助活動の関係性を明らかにし,地域運営組織の共助活動の支援策に役立てる.

予算制約を考慮したインフラの更新計画の導出方法
山崎 翔矢
<要旨>
地方自治体は膨大な量のインフラを管理しており,これまでに様々な種類のインフラに関する長期的な維持管理計画が立案されてきた.しかし,予算制約を踏まえつつ,管理する多くの施設を適切なタイミングで更新する計画の導出は容易ではない.そこで本研究では,予算制約を明示的に考慮しつつ,複数ある施設のどれをいつ更新するのかを導出するマルコフ決定過程モデルを構築する.さらに,管理の対象が多い場合には計算量の観点で長期の計画を導出することが困難であることを踏まえ,複数年を一期として長期の計画を求めた上で,その計画と整合的な年単位の短期的な計画を求めるアプローチを提案する.また,ここで提案した方法を境港市の道路に適用し,モデルの有効性を確認する.

包絡分析法を用いた乗合タクシーの運用方法の評価手法
山本 雄大
<要旨>
乗合タクシーは走行距離の減少といった利点が事業者にある一方,利用者にとっては余分な所要時間を要する,乗車を希望する時刻から調整する必要があるなどの不便が生じる.このため,事業者は自身にとっての利点を損なわずに利用者の不便をどれほど許容した運用とするのかを適切に決定しなければならない.しかし,これらはトレードオフの関係にあるため,運用方法の決定は困難である.そこで本研究では,乗合タクシーの運行を再現する数理モデルと包絡分析法を組み合わせて運用方法を評価し,適切な運用を特定する手法を構築する.その際,この手法を実際の地域に適用し,その有効性を確認する.

最終更新:2023-05-10 (水) 11:22:27