公共システム研究室(鳥取大学)

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2021年度 修士論文卒業論文はこちらです)

Webコメントを用いた社会の風潮の測定手法に関する研究pdf_icon.gif
戸田 雅生
<要旨>
感染症や自然災害といった緊急事態が発生すると,不安や不満といった人々の感情が社会に蔓延しネガティブな社会の風潮が形成される可能性がある.これらの中には一過性のものもあれば,解消されずに人々の心理や行動に悪影響を与えかねないものがあることも懸念される.そのため,どのような風潮がどう変化しているかを把握することは有用であるものの,緊急時に大規模な社会調査を行うことは容易ではない.一方,インターネット上では,日々のニュース記事に対して人々が様々なコメントを投稿しており,さらにコメントに対する賛否を確認することができる.つまり,大量のテキストとそれらに付随する情報を用いて風潮を明らかにすることが可能である.そこで本研究では,Webサイトに投稿されたコメントを対象として,テキスト解析により風潮を測る手法を開発し,風潮の変化のパターンを分類することを試みる.1年間の新型コロナウイルス感染症に関する記事で実証する.

中山間地域における共助活動への協力意向に関する研究pdf_icon.gif
横山 敦一
<要旨>
中山間地域では人口減少に伴い,生活を支えるサービスの縮小や廃止が生じており,住民同士で地域の暮らしを支えるための新たな共助活動を実施する必要性が高まっている.しかし,共助活動の実行可能性は住民の協力意向に直接的な影響を受けるため,どの集落でも直ちに実現できるわけではない.このため,どのような集落であれば共助活動の見込みがあり,また,少ない地域については,どうすればその見込みが高くなるのかが明らかになれば,集落や自治体にとって有益な政策情報となる.そこで本研究では,集落における住民の個人属性,職歴や意識が共助活動への協力意向に与える影響について定量的に分析する.さらに,住民の協力意向を高める要因として,集落を維持するために行われる集落全体の組織的な活動ならびに共助活動とは異なる日常的な集落活動に着目し,これらがどの程度共助活動への協力意向に寄与しうるのかについて明らかにする.

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2021年度 卒業論文

事業所統計に基づく地方部の産業構造の因果分析
浦田 定武
<要旨>
地方の人口の減少は経済規模を縮小させ,さらなる人口流出を引き起こす悪循環になりかねないため,地域産業の支援や企業誘致を行うことで地域経済を強化させることが重要である.その際,産業と産業のつながりが因果関係として分かれば有用である.そこで本研究では,因果探索の手法であるLiNGAMモデルを用いて,ある産業の事業所の廃業が,他の産業にもたらす影響の因果を明らかにすることを目的とする.

地域性に着目した不満の構造の分析~新型コロナウイルス感染症を事例として~
小原 裕司
<要旨>
新型コロナウイルス感染症によって生活様式が変化したことにより,人々にはさまざまな不満が生じた.しかし,新しい生活様式に順応することにより,緩和した不満もあればそうではない不満もあると考えられる.また,不満の程度は都市や地方によって異なると考えられる.そこで,新型コロナウイルス感染症による不満を5段階の欲求(生存/安全/社会的など)に分類し,都道府県ごとに比較を行い感染症が地域に与えた影響を評価する.

道路の巡回パトロールの計画立案手法に関する研究
柏野 築
<要旨>
地方では,公務員や建設業の従業者の減少などにより,インフラの維持管理人員が減少する傾向にある.日々の道路巡回パトロール作業を計画するに際しては,巡回のしやすさを保ちつつ,管理している多くの区間からその日の対象を戦略的に選択する必要があり,人員減少に伴って効率的に選択することが求められる.そこで本研究では,限られた人員のもとで道路の巡回パトロールの作業計画を立案するための手法を混合整数計画法に基づいて開発し,その有効性を実証的に確認する.

単語と話者のネットワークに基づくファシリテーターの評価
鯉江 祥平
<要旨>
ファシリテーターは限られた時間の中で参加者の意見の共有を促す必要がある.しかし, 実際にファシリテーターがどのように対話に貢献しているのかは明らかではない.そこで ,対話における単語と参加者をノードとした2部グラフを作成し,対話の内容と流れを定量化する.そして,ファシリテーターがどんなタイミングでどのような働きをしているのかを明らかにする.パネルディスカッションを事例として分析を行う.

異常降雪時における除雪の行動指針の決定方法
坂上 建志
<要旨>
気候変動の影響により,短時間に極端な降雪量が生じる可能性が高くなっている.その一方で,建設業の人手不足に伴って除雪の体制は脆弱であり,すべての道路を一律に除雪することは困難になっている.このため,異常な降雪を想定して,どれほどの積雪がある場合にはどの道路を除雪の対象とするのかを示した行動指針を事前に決めておくことが重要となる.そこで本研究では,混合整数計画法を用いて除雪車の運行を再現するモデルを開発し,そこで得られる結果を用いて除雪の行動指針の決定を支援する方法を開発する.

乾燥地途上国における道路ネットワーク整備と環境負荷の関係分析
十亀 一恵
<要旨>
モンゴルのような乾燥地途上国では,整備された地域間道路がほとんどなく,車両は直接大地の上を走行している.このため,走行により刻まれた轍が周囲の植生を攪乱し,環境に悪影響を与えていることが指摘されている.本研究では,対象地域内の拠点間移動に対して効率的な道路整備区間を求めるための数理計画モデルを構築し,段階的な道路整備によって,大地を直接走行する距離(環境負荷)がどのように軽減するかを分析する.

タクシー事業者による兼業の実行可能性に関する評価手法
橋本 礼記
<要旨>
タクシー事業は人口が小規模な地域であっても持続できるため,人口が減少している地域での役割が期待されている.しかし,顧客の数が少ないと利益も小さいため,事業の持続可能性は脆弱である.そこで,旅客の運送のみならず,買い物の代行や荷物の配送などの兼業を実施することで利益を補完することが有効な策となる.ただし,兼業を実施すると本業での収入が減る可能性もあることから,事業者はこの点を踏まえて兼業の実行可能性を判断する必要がある.そこで本研究では,混合整数計画法を用いて兼業の実行可能性を評価する手法を構築するとともに,実際のタクシーの運行履歴データを用いて実行可能性を実証的に評価する.

心理的安全性を用いた集落組織の評価に関する研究
春山 神紀
<要旨>
中山間地域では地域住民による送迎や買い物代行といった共助活動を行う必要性が高まっている.しかし,全ての地域においてこれらの活動を実行できるとは考えにくく,地域の雰囲気や組織体制といった地域の特性が共助活動の実行可能性に影響すると考えられる.そこで,本研究では地域の雰囲気を測る指標として心理的安全性の指標を援用し,因子分析と順序ロジスティック回帰分析を用いて地域の雰囲気と共助活動の実行可能性との関係を明らかにする.

移動距離に着目した橋梁の廃止箇所に関する選定手法
平垣 伊吹
<要旨>
インフラの維持管理には多額の費用を要するため,必要性が低くなったインフラを廃止するという選択肢が現実的となっている.インフラの廃止を考える場合,廃止後にどのような社会的な影響が生じるかを見越して,廃止する対象を選定する必要がある.そこで本研究では,インフラとして道路の橋梁を対象として,廃止後の社会的な影響として目的地までの移動距離に着目しつつ,どの箇所を廃止するのが適当かを算出するモデルを整数計画法に基づいて構築する.その上で,数値実験ならびに鳥取市を対象とした概略的な検討を行い,モデルの有効性を確認する.

中山間地域におけるタクシーの供給能力とその影響要因に関する分析
藤川 瑞生
<要旨>
中山間地域では,顧客の減少に伴い,路線バスからタクシーへの転換を検討する自治体が増えている.しかし,タクシー事業者の運転手が減少している中,タクシー事業で顧客の需要に応じうるかは自明ではないため,転換に躊躇せざるを得ない場合が少なくない.そこで本研究では,タクシー事業がどれほどの供給能力をもつのかを算出できる手法を混合整数計画法によって開発する.さらに,供給能力に及ぼす影響要因として顧客の時空間的な分布に着目し,統計的な観点からそれらの影響要因と供給能力との関係を明らかにする.

乾燥地途上国における再生水導入施策の効果計測手法に関する研究
宮本 亮太
<要旨>
乾燥地途上国における水不足問題の解決策の1つとして下水処理水の再利用(再生水の導入)が挙げられる.本研究では,水不足が常態化する地域に再生水を導入して農業振興を図る施策の地域経済効果を分析する手法を提案する.この際,経済波及効果の捕捉に産業連関分析を用いると波及分の生産に要する投入資源の制約という問題が生じるため,産業連関体系を制約条件の一つとする線形計画問題として定式化をおこなう.

最終更新:2023-05-10 (水) 11:13:06