公共システム研究室(鳥取大学)

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2019年度 修士論文卒業論文はこちらです)

速度データを用いた被災地における活動の回復状態の評価pdf_icon.gif
前田夏輝
<要旨>
適切な災害支援を行うためには,災害による被害状況と復興過程を把握する必要がある.地震が発生すると,家屋の倒壊や道路の寸断によって普段の生活に影響が出る.しかし,実際の生活では,静止している人や自家用車で移動している人などが混在し,時間帯やエリアごとに存在している割合も異なる.したがって,地震が起きた際の影響や回復の速度が異なる可能性があるため,適切な災害支援のタイミングや方法も異なると考える.そこで本研究では,情報通信端末から人々の速度データを取得できることから,各エリアの各時間帯における複数の速度で構成されている人々の活動パターンをトピックモデルのトピック分布によって分類する.その後,地震発生前後の活動パターンの変化を比較することで地震によるエリアごとの被害の違いを明らかにする.また,ジェンセン・シャノン情報量を用いて,各エリアの各時間帯における地震発生前後のトピック分布同士の距離を求めることで,回復状況を明らかにする.

小規模自治体における生活サービスの存続可能性に関する実証的研究pdf_icon.gif
安永 優輔
<要旨>
日常生活を支えるための生活サービスには様々な種類があり,公共交通,買い物など多岐に及ぶ.今後は人口減少や高齢化の進行に伴い,小規模な自治体では生活サービスの消費者のみならず供給する人材の減少に直面することが予想される.そのためこれらの自治体では,サービス施設の集約や複合化など,生活サービスを維持するための政策立案が必要となる.その際,どれだけの人口規模ならびに地域特性のもとで存続可能性が危うくなるかを事前に把握できれば,生活サービスを維持するために,政策立案の適切な時期を検討する上で有用である.そこで本研究では,一般化線形モデルを用いて生活サービスの存続可能性に影響を及ぼす要因を特定し評価することにより,それらの要因と存続可能性の関係を実証的に明らかにする.

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2019年度 卒業論文

持続可能性に寄与する集団特性の分析
梅﨑 淳平
<要旨>
小規模高齢化が進行する中山間集落に対し自治体は様々な支援施策を実施している.しかしながら,集落のどのような特性が今後の集落の持続可能性に寄与するのかが明らかでないため,効果的な支援策を十分に検討できていない.そこで本研究では,集落の組織体制や活動に加え,区長や住民の意欲といった要素に着目し,共分散構造分析を用いて集落を構成する要素と持続可能性との関係を明らかにする.

空き家の認知と利活用への協力意向に関する分析
大西 慶輝
<要旨>
人口減少や既存の住宅・建築物の老朽化等に伴い,中心市街地においても空き家が増加している.中心市街地の衰退を防ぐためには,近隣住民と協働で空き家の利活用に取り組むことが重要であるが,どのような地域において利活用が期待できるのかは明らかでない.そこで本研究では,自治会における空き家と住民の空き家の認知状況,さらに利活用に対する協力意向の関係を明らかにし,空き家の利活用が見込める地域を抽出する.

移動希望時刻に基づいた路線バスダイヤの最適化手法
佐々木 貴生
<要旨>
従来,路線バスの時刻表の作成は現場の経験に基づくことが一般であった.しかし,情報通信技術の発展により,経路検索システムに蓄積されている検索ログデータなどを用いて,人々が移動したい時刻を容易に把握することができるようになった.そこで,本研究では,顧客ごとの移動希望時刻と運行時刻の乖離に着目し,運行条件の制約のもとでこれらの合計を最小化する数理最適化問題として路線バスの時刻表を導出する手法を開発する.

新聞記事データを用いた災害復旧の長期化に伴う影響の分析
鈴木 耕平
<要旨>
災害発生後に地域が復旧するまでに要する期間が長期化する傾向にある.その間に生じる影響を緩和するための対策が求められている一方,生活者や企業にどのような影響がいつ発生するのかは必ずしも自明ではない.そこで本研究では,地元の新聞記事を用いて災害復旧の長期化に伴う影響を明らかにする.その際,テキストマイニングを用いて社会的な関心を定量化することで,災害発生後の影響に関する時系列的な様相の推移を実証的に分析する.

中山間地域におけるタクシー事業の持続可能性に関する分析
龍河 駿介
<要旨>
中山間地域では,路線バスからタクシーへの転換を模索する自治体が増えている.しかし,タクシー事業者が持続的にサービスを担えるのかを診断する手法がないため,その転換に躊躇する場合も少なくない.そこで本研究では,所与の顧客のもとで期待できる利益や,必要となる運転手の数を導出するモデルを整数計画法により構築する.その上で,実際のタクシーの運行履歴データを用いて,事業の持続可能性について実証的に考察する.

生活サービスの利便性評価に関するネットワーク論的研究
辻中 昇
<要旨>
コンパクトシティや小さな拠点など,生活サービスの供給施設の再配置が多くの地域で検討されている.その際,複数のサービスをついでに訪問しやすくする立地計画を目指す一方,その観点に立った利便性の評価手法が確立されていない.そこで本研究では,社会ネットワーク分析に基づいて,ついでによるサービスへのアクセスの可能性を考慮した評価指標を開発するとともに,再配置のシミュレーションなどを通じてその有効性を明らかにする.

速度データを用いた補講車両の推定に関する研究
戸田 雅生
<要旨>
従来,商店街の歩行量や道路における通行量は人々によるカウント調査などの実測調査が行われてきたが,一部のエリアや限定された日にちでしか実態を把握できなかった.しかし近年では,携帯電話等の情報通信端末から得られる位置情報などによって,人々の行動を広範囲で把握できるようになった.そこで本研究では,速度データに対しトピックモデルを適用することで,様々なエリアにおいて歩行者量を推計する方法を開発し検証する.

単語の出現パターンに基づく災害復興プロセスの評価
長原 由実
<要旨>
災害時の課題を明らかにするためには災害の復興プロセスを整理することが必要である.しかしながら,復興には人々の生活再建,地域経済といった様々な要素が関連しているため,複数の災害についてその過程を把握することが難しい.そこで本研究では,災害に関する新聞記事に対し,機械学習の 1 つであるナイーブベイズ分類器を適用することで復旧フェーズを推計することを試みる.さらにフェーズの変遷から 2 つの災害の復旧プロセスを比較し,復旧の遅れを可視化する.

住民の参加実態に着目した集落活動の関係分析
横山 敦一
<要旨>
集落の小規模高齢化により,清掃活動や祭りといった集落にとって必要な活動を維持することが困難になっている.すべての活動を維持することはできないため,将来的には活動の縮小や統合を行う必要があるが,どの活動を優先して維持すべきかは明らかではない.そこで本研究では,住民の活動への参加状況から,ISM 法を用いて集落の活動をいくつかの階層に分類し,集落の持続可能性の観点から維持すべき活動を明らかにする.

タクシーによる貨客混載に関する数理モデルの開発
米澤 雅人
<要旨>
地方では,旅客と貨物の双方を運搬する貨客混載システムに注目が集まっている.しかし,システムの導入が経営の改善に資するかは必ずしも自明ではなく,システムの導入に躊躇する事業者も少なくない.そこで本研究では,タクシー事業者がシステムを導入する場面を想定し,導入後に期待できる利益や運営に必要となる運転手の数を試算するための混合整数計画モデルを構築する.その上で,実際の履歴データを用いて導入可能性を実証的に考察する.

最終更新:2021-02-17 (水) 17:28:42