公共システム研究室(鳥取大学)

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2018年度 修士論文卒業論文はこちらです)

再生水システムにおける下水処理施設の最適配置計画モデルpdf_icon.gif
小川 智之
<要旨>
世界の乾燥地には水資源に乏しい地域が数多くあり,こうした地域で安定的に水資源を確保していくための一つの方法として再生水,すなわち下水処理水の再利用がある.一般に下水処理施設は,処理後に環境中に放出することを想定して下流域に建設されることが多い.しかし,再生水を需要地へ送り届けることを考慮に入れると,経済的な観点から必ずしも下流域への建設が最適であるとは限らない.そこで本研究では,下水処理施設が未整備の乾燥地において再生水の利用を前提に下水処理施設を建設する場面を想定し,処理施設の最適な立地を導出する数理計画モデルを開発する.具体的には,混合整数線形計画問題を用いてこの問題を定式化し,地区ごとの下水発生量および再生水需要量が所与の下で,施設の建設・管理費および送水費からなる総費用を最小にするような下水処理施設の配置を明らかにする.その上で,下水発生量や再生水需要量の分布に応じた処理施設の立地の変化を分析する.

タクシーによる貨客混載システムの導入可能性に関する分析pdf_icon.gif
小澤 陽
<要旨>
地方では人口減少や担い手不足が深刻化しており,公共交通や宅配サービスの継続性が懸念されている.この背景のもとで,公共交通の車両を用いて旅客と貨物を運搬する貨客混載システムに注目が集まっている.この仕組みにより,公共交通事業者の経営の改善と宅配事業者の人手不足を同時に解決することが期待される.しかし,運搬する宅配貨物量が多いと運行時間が大きく増大しうるなど,システムの導入が経営の改善に資するかは必ずしも自明ではなく,システムの導入に躊躇する事業者も少なくないと考えられる.そこで本研究では,公共交通としてタクシーを取り上げ,システムを導入した場合の事業性を試算するための整数計画モデルを構築する.その上で,実際の履歴データを用いて貨客混載システムの稼動状況を実証的に分析し,その結果に基づいて貨客混載システムの導入可能性について考察する.

討議の特性が住民の防災意識に与える効果pdf_icon.gif
嶋津 裕樹
<要旨>
地域社会の問題を解決することを目的として住民討議の場が設けられることは多く,防災分野においても,地域の災害情報を共有し災害時の行動計画を作成することを目的として,防災ワークショップが数多く実施されている.災害時における共助が重要視されていることから,計画を作成するのみではなく,討議を通じて住民の防災意識が向上し,防災行動が促されることが重要である.しかし,討議の運用方法に着目してみると,どのような話題がどのような形式でどの程度議論されれば,住民の防災意識に寄与するのかは明らかではない.そこで本研究では,防災分野を対象として,住民の防災意識と討議の構造の関係をテキスト解析により明らかにする方法論を開発する.そして,小規模高齢集落における防災ワークショップを対象として,防災意識が高い集落と低い集落の討議のパターンを実証的に明らかにする.

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2018年度 卒業論文

道路巡視パトロールの計画手法に関する研究
木下 凌
<要旨>
道路の巡視パトロールは,安全で円滑な交通を確保するために重要な業務である.しかし,公務員数や公共事業費の縮減により,巡視を担う人員の減少が予期される.このため,減少した人員に応じて巡視パトロールの計画を見直す場面が生じると考えられるが,それを支援するための手法があれば有用である.そこで本研究では,巡視パトロールの計画立案を支援するための手法を線形計画法により開発し,その有効性を実証的に確認する.

大量文書データを用いた社会的関心の変遷に関する研究~防災分野を対象として~
佐伯 猛
<要旨>
新聞記事から人々の社会的関心を明らかにすることが試みられており,近年ではテキスト解析を適用する事例が多い.しかしながら,大規模な新聞記事テキストから特定の分野を絞って話題を推計することや,その話題の長期的な変遷を明らかにすることは困難である.そこで本研究では,深層学習を用いて,ある分野における社会的関心とその変遷を明らかにする方法を開発し,防災に関する20年分の新聞記事を用いて実証する.

小規模高齢集落における共同活動の実行可能性に関する研究
塚本 泰介
<要旨>
集落では清掃や雪かきといった活動を住民同士が協力して行なっている.小規模高齢化が進む集落では,少ない住民で活動を行っていく必要があるが,どんな住民がいれば活動が実行できるのかは分からない.そこで本研究では,集落の住民の共同活動に対する積極性をまちづくり活動への参加態度から定量的に評価する手法を開発し,共同活動の実態と積極性の関係を明らかにするとともに,集落における共同活動の実行可能性を評価する.

ICカードデータを用いた鉄道利用者の回遊行動に関する分析
中西 勇人
<要旨>
地方都市では鉄道利用者の減少が続いており,効果的な利用促進の実施が必要となっている.そのための一つの策として,自宅と主な目的地以外にも鉄道で立ち寄る回遊的な行動を既存の利用者に働きかけることが考えられる.そこで本研究では,ICカードによるビッグデータに非負値行列因子分解を適用して鉄道利用者の回遊行動の特徴を抽出し,季節や曜日,時刻の違いによってどのような回遊行動が現れるのかを実証的に明らかにする.

災害時における地元建設業の業務受容能力に関する評価
前橋 浩太
<要旨>
地方の建設業は担い手の減少等により衰退が進んでいる.このため,災害が発生した場合,地元の企業だけでは地域の維持に貢献できないことが懸念される.しかし,現在の企業が災害時にどの程度の業務量を受容できるかが明らかでないため,この懸念への対応の緊急性や必要性が判断できない.そこで本研究では,地元の建設業の業務対応能力を求める手法を混合正規モデルを用いて構築した上で,各都道府県を対象に実証的に検討する.

公共交通ビッグデータを用いた潜在顧客の把握に関する実証的研究
森山 祐希
<要旨>
交通ICカードの普及により,ビッグデータを活用した公共交通の利用促進の展開が期待されている.そのための技術の一つとして,潜在的な顧客を発見する手法が開発されているが,その妥当性は確認されていない.そこで本研究では,実際に行われた利用促進策に着目し,そのもとでの実績数と手法が予測する潜在的な顧客数の相関関係を確認することで妥当性を検証するとともに,この手法の適用が有効となる地区の条件を明らかにする.

携帯位置情報を用いた生活サービスの利用時間の推計手法
山口 慎二
<要旨>
人々がいつ買い物や医療などの生活サービスを利用するのかは,様々な計画や政策の立案に必要な情報である.従来,サービスの利用時間はアンケート調査で断片的に把握せざるを得なかったが,最近では携帯位置情報が活用できるようになった.しかし,直接サービスの利用時間を知ることはできない.そこで本研究では,モバイル空間統計というビッグデータを用いつつ,トピックモデルを改良して,利用時間を推計する手法を検討する.

最終更新:2021-02-17 (水) 17:04:35