公共システム研究室(鳥取大学)

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2017年度 修士論文卒業論文はこちらです)

テキスト解析による社会と学術的な関心の推移に関する研究〜防災分野を対象として〜pdf_icon.gif
河野 夏樹
<要旨>
わが国は自然災害が多く,近年では極端な災害の頻発による被害の拡大なども問題となっている.また,急速な人口減少と高齢化が進行しており,地域の活力の低下が懸念されている.これらの背景のもとで,防災に関する社会的な関心は高まっており,課題の解決が求められている.そのために,科学技術を振興することが一つの重要な国策に位置づけられており,社会的な関心に応えるための防災研究の推進が期待されている.しかし,学術的な関心がどのような状態にあり,それらがどのような変遷をたどり,その時々の社会的な関心とどのような位置関係にあったのかを知ることは容易ではなく,過去の反省や今後の改善を困難にしている.そこで本研究では,防災分野を対象として,学術的な関心と社会的な関心との距離がどのように推移しているのかをテキスト解析により明らかにする方法論を開発する.その上で,1995年以降の論文ならびに新聞のデータを活用して,どのような特徴が見られるのかを実証的に明らかにする.

生活サービスのアクセス利便性に関する評価手法−付加的な活動のしやすさに着目して− pdf_icon.gif
山口 博哉
<要旨>
災害が発生すると市民の生活に影響が生じる.しかし,インフラや施設の復旧状況,宿泊施設の予約の回復状況などは比較的容易に把握できるのに対して,これまでは市民の生活への影響を直接的かつ正確に把握することは困難であった.しかし近年では,携帯電話の位置情報データが広く活用できるようになり,これらを用いて影響を明らかにすることが可能になっている.これらのデータには人々の一部の属性も付されていることから,場所による影響の差異のみならず,属性の違いによるそれもとらえることができる.そこで本研究では,時系列データから特徴的な部分を選び出す異常検知の手法をベースに,様々な人々への影響を実証的に評価する.その際,これらの手法は変化の検知を目的としていることから,異常の程度や継続時間などのいくつかの側面から影響を定量化しうるよう改良する.その上で,平成29年2月に鳥取県で発生した豪雪を対象とし,手法の有用性を検証する.

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2017年度 卒業論文

再利用及び段階的処理を考慮した下水処理施設の立地計画に関する研究 pdf_icon.gif
泉 良太
<要旨>
水資源の乏しい地域で安定的に水を確保していくためには,下水処理水の再利用,すなわち再生水の利用が一つの手段となりうる.従来の下水処理施設は,下水の集約・処理後の排水の都合から海や川の近くに建設されてきたが,再生水の供給を考慮すればそうした立地が最適とは限らない.そこで本研究では下水処理水の再利用を念頭におき,下水処理施設(二次処理施設,高度処理施設)の最適な立地を求めるための数理計画モデルを構築する.

路線の重要性を踏まえた道路巡視パトロール政策に関する研究 pdf_icon.gif
猪井 夏雄
<要旨>
地方の小規模な自治体では,公務員数の削減や公共事業費の縮減により,維持管理人員は減少する傾向にある.道路における巡視パトロール人員についても同様であり,今後,巡視の方針を見直す機会が増すと考えられる.このため,限られた人員での効率的な巡視パトロール政策を導出する手法があればその見直しにとって有用である.その際,それぞれの路線は重要度が異なるため,この点を反映した政策が必要である.本研究では,路線の重要性に基づいた巡視パトロール政策を線形計画法により開発し,その有効性を実証的に確認する.

巡視パトロールの記録データに基づいた道路の障害物の発生予測に関する研究 pdf_icon.gif
梶谷 茉里有
<要旨>
人口規模の少ない自治体では,道路の巡視パトロールに十分な手がまわらない状況にある.しかし,長期間にわたって巡視を行わなければ障害物が累積し,交通事故等のリスクが高まる.このため,どの路線にどれだけの障害物があるのかを巡視の前に予測できれば,少ない人手でも効率的な巡視が可能になると考えられる.そこで本研究では,日々に蓄積される巡視パトロールの記録データを活用し,それをベイズ学習することで障害物の発生を予測する手法を開発するとともに,その適用可能性を実際のフィールドで検証する.

地域経済分析に基づく再生水導入施策の評価に関する研究 pdf_icon.gif
服部 隼也
<要旨>
乾燥地のように水資源に乏しい地域において安定的に水を確保する一つの手段として,下水処理水の再利用(再生水)が挙げられる.本研究では,水不足が常態化する地域で複数の再生水導入施策を想定し,これにより農業生産が増加できた場合の地域経済効果を分析する.具体的には,再生水が使える状況下での最適な品目別生産量を線形計画法により求め,次に,農業生産の増加分が地域経済にもたらす波及効果を産業連関分析により算出する.

公共交通ビッグデータを用いた優良顧客の発見手法に関する研究 pdf_icon.gif
廣畑 健也
<要旨>
地方では,少子高齢化や人口減少の影響に伴って公共交通の利用者数が減少している.近年では交通ICカードの普及が進み,そこで得られるビッグデータを活用したマーケティングが可能になっており,利用者数の確保に資する対策が期待されている.そこで本研究では,香川県の高松琴平電気鉄道を対象に,長期の利用履歴に基づいて顧客をクラスタリングすることで優良顧客の特性を明らかにし,その上で,各地域で予測される顧客数と実際の利用者数を比較することで,どの地域で優良顧客の発見が可能かを見出す手法を開発する.

生活サービスの利用時間の推計手法に関する研究 pdf_icon.gif
布野 ちなみ
<要旨>
日常的な生活を支えるためには買い物支援,燃料供給,医療など様々な生活サービスが必要である.これらの利用時間は,公共交通などのサービスや施設の運営を計画するに際して重要な情報であるが,従来はパーソントリップ調査などのアンケート調査でそれを断片的に把握せざるを得なかった.しかし,最近では携帯位置情報によって人々の行動が把握できるようになってきた.そこで本研究では,モバイル空間統計というビッグデータを用いて,買い物を対象としてサービスの利用時間を推計する手法を検討する.

携帯位置情報を用いた災害時における住民行動の回復過程に関する分析 pdf_icon.gif
前田 夏輝
<要旨>
災害発生後の復旧を評価する指標にはライフラインや基幹インフラの復旧率が挙げられる.しかし,災害が人々の日常的な行動に与えた影響を評価する指標は少ない.近年,情報通信端末の普及により,時間毎の位置情報といった人々の行動に関する膨大なデータを得ることが可能になった.本研究では,熊本地震を事例として,移動速度データを用いて災害が人々の行動に与える影響を定量化する手法を提案し,回復の過程を明らかにする.

防災ワークショップの効果に関する分析−住民の発言と行動意図に着目して− pdf_icon.gif
渡邊 俊介
<要旨>
地域防災力の向上を目的として防災ワークショップ(WS)が実施されている.防災は人命に直結することから,防災計画を作成するのみではなく,人々の防災行動を促すWSを行うことが重要である.しかしその方法は明らかではない.本研究は,沖縄県国頭村の複数の集落で実施した防災WSを対象とし,WSにおける発言の内容が参加者の防災行動意図に与える影響を明らかにする手法を開発する.

最終更新:2021-02-17 (水) 16:41:13