公共システム研究室(鳥取大学)

thesis.gif
2016年度 修士論文卒業論文はこちらです)

維持管理人員の減少に着目した道路の巡回政策に関する研究 pdf_icon.gif
五百木 竜也
<要旨>
地域における人々の安心安全な生活を支援するには,社会資本の本来の機能を維持することが必要である.そのためには,それらの着実な点検や見回りが重要である.地方における小規模な自治体では,公務員数の削減や公共事業費の縮減などにより,道路の維持管理にあたる人員が減少する傾向がある.道路管理者が実施している維持管理業務の一つとして道路の巡回があり,今後は巡回の人員が減ることが予期される.このため,人員の減少にあわせた道路の巡回に関する簡易なシミュレーションや,人員が減少した場合に生じる不具合の数をあらかじめ見積もっておき,今後の維持管理の具体的な姿を構想することが道路管理者に求められる.しかしながら,そのための実用的な方法は開発されていない.本研究では,限られた人員での道路の巡回政策を導出するためのモデルを線形計画法を用いて開発するとともに,その有効性をケーススタディにより実証する.

生活サービスのアクセス利便性に関する評価手法−付加的な活動のしやすさに着目して− pdf_icon.gif
来海 達也
<要旨>
人口減少の進行に伴い,地方における多くの地域では商業施設や医療施設などの日常生活に必要な施設の再配置や撤退が予想される.このため,生活サービスのアクセス利便性の低下が懸念されている.その影響を緩和するため,「小さな拠点」のように施設の立地を見直す動きが進んでいる.すなわち,複数の施設を一定の範囲に集約し,生活サービスの持続可能性を維持するとともに,住民が外出する際に付加的な活動をしやすくする取り組みに注目が集まっている.しかし,生活サービスへのアクセス利便性を評価する手法が確立されていないため,どのような立地が効果的かを客観的に把握することが困難である.そこで本研究では,生活サービスにアクセスする際の距離に基づき,住民による付加的な活動のしやすさを協力ゲーム論的に評価する指標を開発する.その上で,実際の地域を対象にアクセス利便性を評価し,その有効性を実証的に確認する.

地域経済分析に基づく持続可能な木質バイオマス資源利活用施策の評価 pdf_icon.gif
高澤 靖
<要旨>
近年,過疎化・高齢化や経済のグローバル化に伴い,地方の山林・農地といった資源が放置されている状態が見られる.こうした背景から,里山資本主義のように,燃料やエネルギーなどを地域外に依存せずに,域内資源を用いて生産・供給し,資源の有効活用により経済循環をよくして地域の自立と安定化を目指そうとする考え方が提唱されている.しかしながら,山間地域では,大規模な発電システムの下で安定的・持続的な資源の供給が困難になったり,伐採が山奥に進むにつれて運搬コストが増加したりする点が十分考慮されないままに自治体などが木質バイオマス事業に手を付けてしまい,経営的に失敗する事例も見られる.本研究では,産業連関表を用いた地域経済分析手法により,持続可能な資源量の下で想定される木質バイオマス資源利活用施策の実施が社会・経済に与える効果を計測する.これにより,どのくらいの規模であれば木質バイオマス資源の利活用施策が安定的・持続的に成立しうるかを評価する.

gra_bar2.gif
2016年度 卒業論文

地域間流動モデルを用いた農産品の災害リスク管理施策に関する研究 pdf_icon.gif
小川 智之
<要旨>
わが国では農産品の大部分を地方の生産地に依存しているため,生産地が被災すれば大消費地である都市部に大きな影響が及び,流通量の減少や価格の高騰が発生する.こうした影響を緩和するには,想定する災害に対して代替生産地となりうる地域を特定し,安定した購入先を確保できるようにしておくことが農産品の災害リスク管理施策として有効である.本研究では,災害により農産品の供給が一部困難になる想定の下で地域間流動を予測するモデルを構築し,品目・消費地ごとに災害時における代替生産地を明らかにする.

気候変動による国際経済への影響分析に関する研究:仮想水移動に着目して pdf_icon.gif
小澤 陽
<要旨>
気候変動や人口増加を背景に,世界的な水不足が今後ますます増大するとの考え方が主流になっている.そのような中,水不足がある国の生産性に影響し,農作物を中心に生産量が低下した場合,経済の影響は当該国国内のみならず,貿易相手国にも及びうる.本研究では,環境の変化に起因する水不足が世界経済に及ぼしうる影響について,応用一般均衡モデルを用いて定量的に分析するとともに,仮想水の考え方を用いて,国際貿易に伴い水の移動がどのように変化するのかに着目する.

公共交通利用者の外出時間に関する分析−サービスの利便性に着目して− pdf_icon.gif
木村 優太
<要旨>
鉄道やバスなどの公共交通サービスは,通勤・通学や買い物など,人々が生活を営む上での基本的な活動を支える役割を担っている.しかし,公共交通サービスの利便性が高くない地域においては,利用者が利用したい時間に利用できなくなる可能性が高く,利用を抑制する要因となる.そこで本研究では,どのサービス水準を閾値として人々が希望する時間に外出が可能となるのかを統計的に見出し,公共交通利用者の利用したい時間を明らかになる.

防災ワークショップにおけるファシリテーション評価方法の開発 pdf_icon.gif
熊毛健太
<要旨>
防災ワークショップの役割の一つとして,地域特性を反映させた実行性の高い防災対策案を作成することが挙げられる.ファシリテーターは,住民から地域特性を明らかにする発言や,防災対策に関する具体的な発言を得る必要がある.しかしながら,ファシリテーターがどの程度議論に寄与できているのかは明らかではない.本研究は,発言内容と発言の推移を定量的に評価することを目的とし,発言録のテキスト分析を行う.

再利用を考慮した下水処理施設の立地計画に関する研究 pdf_icon.gif
近藤 素規
<要旨>
世界の人口は増加し続けており,その中には乾燥地にあって水資源に乏しい地域も含まれる.そうした地域で安定的に水資源を確保していくためには,下水処理水の再利用が一つの有効な手段となりうる.本研究では,処理水を再利用する場合の下水処理施設の最適な立地計画に関する問題を考える.具体的には,これを数理計画問題として定式化し,施設の最適な建設場所,および処理水の各地区への配分量を求めることで,効果的な水循環を形成する都市のありかたについて示唆する.

質問紙調査データへの混合ユニグラムモデルの適用可能性に関する一考察 pdf_icon.gif
嶋津 裕樹
<要旨>
古くからモノやサービスのレビューを行うツールとして質問紙調査が実施されてきた.しかし,従来の手法では全ての項目に対しての潜在的なグループを見出すことは困難であり,質問紙手法の課題の一つである.そこで,本研究では統計的潜在意味解析手法の一つである混合ユニグラムモデルを質問紙調査データに適用し,課題の解決を検討することを目的とする.

往復の交通手段に着目した公共交通の利用に関する研究 pdf_icon.gif
妹尾 健治
<要旨>
高齢社会における交通手段として公共交通の役割が再評価されている.しかし,地方における公共交通は利便性が高くない場合が多く,人々は外出に際して往復ともに公共交通を利用するとは限らない.往復の交通手段が異なる人々が多い場合は,公共交通とそれ以外の交通手段を組み合わせた交通政策が有効になる.そこで本研究では,どのような交通手段を組み合わせた利用がなされているのかを離散選択モデルを用いて分析する.

地域道路ネットワークの局所的途絶による社会経済的影響の計量分析 pdf_icon.gif
田和 正之
<要旨>
今日のわが国の経済活動は交通ネットワークに依存しており,災害時によってひとたび道路が寸断すれば大きな経済損失が生じ得るとともに,その損失は間接被害として当該地域外へ波及しうる.本研究では,空間的応用一般均衡モデルを用いてトリップを地域間交易の派生需要として考慮する分析枠組みを適用し,地方部の高速道路で突発的災害により生じうる局所的な交通途絶の社会経済的影響を分析する.また,緩和策としてインターチェンジの設置を想定し,被害軽減効果を試算する.

経路重複を考慮した道路ネットワーク冗長性指標の活用に関する研究 pdf_icon.gif
野々上 陽子
<要旨>
災害時の道路の途絶は避難・救助・支援等を困難にさせる.そのため,道路の一部が途絶しても目的地に到達できるようにするには迂回路の確保が重要となる.本研究では,道路ネットワークの一部が途絶したときの迂回路のあり方を評価する指標である冗長性指標を鳥取市に適用し,市内避難所等の重要施設や防災拠点および緊急輸送道路ネットワークの評価を行う.また,同ネットワークを補完するための道路整備を想定し,冗長性指標を用いて,複数の整備路線に対する効果的な整備の順序について検討する.

回遊性を考慮したアクセシビリティ指標に関する研究 pdf_icon.gif
信沢 健一
<要旨>
公共交通の利便性を評価する手法としてアクセシビリティ指標があり,その代表的な指標として,累積機会に基づく指標がある.この指標は,目的地までの到達のしやすさ,すなわち到達可能な目的地の多さと距離を総合的に評価しているが,複数の目的地を人々が回遊するケースを想定していない.このため,中心市街地における循環バスの整備といった目的地の回遊性を高めるための政策を評価することができない.そこで,本研究ではネットワーク理論に基づいて,人々の回遊性を考慮したアクセシビリティ指標を開発する.

地域運営組織の持続的な活動に関する評価―組織の活動記録と構成員の認識に着目して― pdf_icon.gif
松梨 一揮
<要旨>
人口減少や高齢化の問題を抱える地域では,住民自らが主体的に地域の問題解決を行う必要が生じている.問題解決の拠点として,地域運営組織が設置されているが,持続的な活動を行うための運営方法に課題を抱えている組織も存在する.本研究では,大山町を事例として,組織の活動記録と構成員の発言録に対しテキストの解析を行い,地域住民のアンケート調査と比較することで,組織の外部と内部から組織の活動を評価する.

非競合サービスからのアクセスに着目した施設の集客性に関する分析 pdf_icon.gif
三木 絢央
<要旨>
中山間地域では人口減少や高齢化が進行していることから,買い物や医療といった日常生活に必要なサービスを維持することが困難になると予想される.近年,小さな拠点づくりが進められているが,生活サービス施設を持続的に維持していくためには,施設を集約することは目的となりえず,施設の集客性を高めることが最終的な目的である.そこで本研究では,非競合サービスからのアクセスに着目した施設の集客性を明らかにする.

移動販売のサービス水準に着目した店舗選択に関する実証的分析 pdf_icon.gif
山口 魁斗
<要旨>
近年,買い物弱者への支援対策として移動販売サービスを実施している地域が多く見られる.事業者は移動販売サービスを自由に設定できるものの,これらがどのような水準にあればどの程度の顧客が期待できるかは明らかではない.そこで本研究では,品揃えや巡回の頻度といった移動販売のサービス水準に着目し,周辺の固定店舗を含めた人々の店舗選択を経営工学的なモデルを用いて構築する.その上でモデルの有効性を鳥取県の中山間地域を対象として実証的に検討する.

災害時における地元建設業の業務受容能力に関する実証分析 pdf_icon.gif
吉田 怜央
<要旨>
近年,地方の建設業は担い手の減少等により縮小や衰退が進んでいる.この傾向がさらに進む中で災害が発生した場合,地域経済への悪影響のみならず,地域コミュニティの崩壊を招くことが懸念される.しかし,現在の建設業が災害時にどの程度の業務量を受容できるかが明らかでないため,これらの懸念への対応の緊急性や必要性が判断できない.そこで本研究では,地元の建設業の業務受容能力を求める手法を混合正規モデルを用いて構築した上で,中国,九州地方を対象に実証的に検討する.

最終更新:2017-04-14 (金) 14:30:07