公共システム研究室(鳥取大学)

thesis.gif
2014年度 修士論文卒業論文はこちらです)

交通政策評価のための交通・経済統合モデルの構築と応用 pdf_icon.gif
北野 裕也
<要旨>
交通インフラは人々が経済活動を行う上で重要な役割を担っている.わが国では1960年頃の高度経済成長期に集中的な交通インフラの整備が行われてきた.そのため,現在は老朽化の目安となる50年以上が経過する交通インフラが増加している.人口減少や財政難という制約の中,今後,真に必要な交通インフラの整備を戦略的に行っていく必要がある.これまで,交通政策の評価には,その政策の影響想定範囲に応じて,国土レベルでは応用一般均衡分析のような経済モデル,都市レベルでは利用者均衡などの交通量配分手法が用いられてきた.今後,戦略的に交通インフラ整備を検討する上では,異なる空間スケールに対応した多様なアウトプットが情報として求められる.本研究では,交通政策の評価を行うモデルとして,利用者均衡に基づく交通量配分と一般均衡を統合した交通・経済モデルの構築を行い,必要なデータの整理,および交通政策評価への適用を通じて,本モデルの有用性や適用限界等について検討する.

都市圏道路ネットワークの維持管理方策に関する実証分析 pdf_icon.gif
近藤 諒学
<要旨>
近年,我が国は高度経済成長期前後に集中して建設された道路構造物が一斉に更新の時期をむかえるという状況に直面しており,長期的な視野で有効な修繕計画や維持管理政策を立てることが急務となっている.道路交通は人々の移動や社会の物流を支えるなど経済活動と密接に関係しているが,道路整備の評価に係る従来の交通量配分分析では,経済活動とそれに派生して生じる交通トリップの変更・取り止めとの相互作用という視点が十分には盛り込まれていない.そのため,政策評価の対象によってはモデルの描写が問題の本質を欠く恐れもある.本研究では,交通量の配分に基づく道路ネットワークの評価に際して,経済均衡の枠組みを導入することでOD交通需要が経済活動の変化に基づくフィードバックメカニズムを内包するようなモデルを構築する.その上で,構築したモデルを都市圏の実ネットワークに適用し,将来の維持管理や災害リスク管理に資する最適な道路ネットワーク設計のあり方について知見を得ることを目的とする.

中山間地域における移動販売サービスの顧客層に関する実証的分析 pdf_icon.gif
西村 光法
<要旨>
近年,地方や中山間地域といった過疎地域では商業施設や公共交通機関の撤退・縮小が進行している.このような地域への買い物支援策の一つとして,移動販売サービスによる買い物支援がある.移動販売サービスは特定の年齢層や性別,世帯構成,健康状態が利用していると考えられる.また,買い物という行動には個人の価値観が反映され,例えば商品を選択する楽しみや住民同士の会話,近所の人と安否が互いに確認できるといった様々な機能に魅力を感じて移動販売を利用する人もいるだろう.これらの顧客層を把握することができれば,地域に必要な機能を充実することができ,サービスの持続可能性の改善に寄与しうる.そこで本研究では,移動販売サービスの顧客層がどのような人々であるかを離散選択モデルを用いて明らかにした上で,顧客はどのような価値意識でサービスを利用しているのかを実証的に明らかにする.

高齢者の買い物行動と生活機能の維持に関する一考察 pdf_icon.gif
濱千代 悠太
<要旨>
人口減少や過疎化に伴い小売業や公共交通機関が撤退・縮小している地域では,買い物が困難となる高齢者が増加しており,すでに多くの自治体において様々な買い物支援が企画・実行されている.買い物は,生命維持のための食料の調達だけでなく,買い物先までの移動機能,商品を持ち運ぶ運動機能,買い物先で出会った人たちと会話をする社交機能,商品の値札や説明書きを読み理解する認知機能などの様々な生活機能を行使する機会であるため,機能的な健康の維持に貢献していると考えられる.すなわち,買い物支援という政策は,生活を営む上での多様な生活機能の維持に寄与しうる可能性がある.そこで本研究では,高齢者の買い物行動に着目し,性別,世帯構成,活動能力や買い物の頻度などを取り上げ,それらが多様な生活機能の維持に与える影響を中山間地域のデータを用いて実証的に検討する.

gra_bar2.gif
2014年度 卒業論文

移動販売サービスが提供する多面的機能の評価に関する研究 pdf_icon.gif
青木 彩華
<要旨>
多くの中山間地域では,一般に商店が遠方であるため,移動販売サービスが重要な買い物手段である.移動販売サービスは商品を供給する機能だけではなく,商品を選択する楽しみや住民同士の会話,高齢者の安否確認など重要な機能を提供している.これらのどの機能がどの利用者層に評価されているかを把握することが出来れば,地域に必要とされる機能を充実することができ,サービスの持続可能性の改善に寄与しうる.本研究では,離散選択モデルを用いて移動販売サービスが提供する多面的な機能を定量的・実証的に評価する.

道路の維持管理要員の減少に着目した巡回政策に関する研究 pdf_icon.gif
五百木 竜也
<要旨>
地方においては,公務員数の削減や公共事業費の縮減などにより,道路の維持管理にあたる要員が減少する傾向にある.道路管理者が実施している維持管理業務の1つとして,管理対象地域における道路の巡回があり,今後は巡回の要員が減ることが予期される.そこで本研究では,限られた要員での巡回政策を導出するとともに,そのもとで生じる社会的費用を評価する手法を整数計画法により開発する.その上で,実際の道路ネットワークを対象として,所与の要員がどれだけ社会的費用をもたらすのか,また,どのような巡回政策が有効となるかを試算する.

商品補充を考慮した移動販売車の巡回計画 pdf_icon.gif
梶本 剛志
<要旨>
中山間地域で増えつつある買い物弱者の生活を支援するサービス形態の一つに移動販売がある.移動販売では,トラックやワゴン車に商品を積み集落を周ることで住民の生活を支えている.しかし,移動販売車の積載容量のため,巡回ルート後半に当たる集落ほど品切れやバラエティの低下に直面する可能性がある.このため,商品補充が容易な条件を有する現場が移動販売において有利であると言える.本研究では,数理計画問題を用いて商品補充を考慮した巡回計画の作成を試みる.

機能の再配置に着目した公共施設管理に関するモデル分析 pdf_icon.gif
来海 達也
<要旨>
近年,全国の自治体では公共施設の老朽化による維持管理費用の増加が問題となっている.そのため,一つの施設に複数の機能を集約し,全体の維持管理費用を減らすような取組みが注目されている.一方で,過度な集約はアクセスの観点で住民に不利益が生じることが懸念される.そこで,本研究では,維持管理費用とアクセス費用の観点に基づいて,上記の例のような公共施設の機能の再配置を導出するモデルを開発し,仮想的なデータを用いてモデルの有用性を確認することを目的とする.

活動時間の多様性に着目したアクセシビリティ指標に関する研究 pdf_icon.gif
酒井 駿
<要旨>
近年,地方ではモータリゼーションの進展や人口減少の影響により,公共交通サービスの縮小や商業施設の撤退が相次いでいる.これに伴い,高齢者や学生などを中心とした移動手段の少ない人々は,活動する際に選択できる時間の多様性が減少している.すなわち,活動の機会が制限される.したがって,このような地域では,住民の活動機会を確保するための政策を講じることが社会的な要請となっている.具体的な政策を検討するに際しては,どれだけの活動機会を確保しうるのかを定量的に把握できれば,その選択や優先性の明確化に有用である.ただし,活動機会を単純に数えあえるだけではなく,個人の希望する活動とのずれを考慮した実質的な評価が必要である.そこで本研究では,活動機会を時間の多様性の観点から評価するアクセシビリティの指標を開発する.

公共交通の観光目的利用可能性に関する研究pdf_icon.gif
佐藤 史康
<要旨>
今日,わが国では政府を中心に観光立国に向けた取り組みが各地に見られ,観光産業は今後わが国の重要な産業になってくることが予想される.本研究では,魅力度や隣接地域公共交通サービス水準に着目し,都道府県間旅客流動データから観光者の目的地選択行動をどのくらい分析できるのかを明らかにし,また,観光に公共交通が寄与する可能性について考察を行う.

里山整備による社会・経済的影響の分析 pdf_icon.gif
高澤 靖
<要旨>
近年,過疎化・高齢化や経済のグローバル化に伴い,地方の山林,農地と言った地域資源の管理に深刻な懸念が生じている.この状況を打開するひとつの考え方として里山資本主義がある.これは,燃料やエネルギーなどを外の地域から移輸入してくるのではなく,その土地の資源を積極的に活用して循環させたり,資源の無駄遣いを抑え,お金を地域内で回したりするというものである.本研究では,里山資本主義の考えに基づき,地方都市で実用可能性の高そうな施策を設定し,それに係る一連の活動が社会・経済に与える影響を分析する.

活動機会の多様性に着目したアクセシビリティ指標に関する研究 pdf_icon.gif
田中凜
<要旨>
近年,地方ではモータリゼーションの進展や人口減少の影響により,公共交通サービスの縮小や商業施設の撤退が相次いでいる.これに伴い,高齢者や学生などを中心とした移動手段の少ない人々は,活動する際に選択できる時間や目的地の多様性が減少している.すなわち,活動の機会が制限される.したがって,このような地域では,住民の活動機会を確保するための政策を講じることが社会的な要請となっている.具体的な政策を検討するに際しては,どれだけの活動機会を確保しうるのかを定量的に把握することができれば,その政策の選択や優先性の明確化に有用である.ただし,活動機会を単純に数え上げるだけでなく,個人の希望する活動とのずれを考慮した実質的な評価が必要である.そこで本研究では,実質的な活動機会を時間と目的地の多様性の観点から評価するアクセシビリティの指標を開発する.

地方における建設企業の持続可能性に関する分析 pdf_icon.gif
田村 英之
<要旨>
公共事業費の削減,就業者の減少により地方での建設業では廃業を余儀なくされる企業が増え続けると予想される.しかしながら,地方の建設業は社会資本の整備・維持,災害復旧・復興,除雪等の重要な役割を担っているため,当事者の自助努力はもとより,異分野展開,企業合併等の対策を自治体が働きかけていくことも重要である.そのためには,自治体が一般的な情報を用いて企業の現状ならびに将来の持続可能性を診断する手法が必要である.そこで本研究では,損益分岐点分析を用いた診断手法を開発するとともに,鳥取県を対象に実証分析を行う.

自治体・大学間連携の生産性に関するネットワーク論的分析 pdf_icon.gif
錦郡 健
<要旨>
様々な社会問題が顕在化する一方で,公務員の数は減少の一途をたどっている現在では,従来とは違った地域政策の形成が地方自治体に求められている.これを実現するためには,自治体は外部の機関と連携することで多様な知識・能力を補完することが有効であり,その事例も数多くみられる.しかし,連携による成果の生産性は自治体ごとに様々である.本研究では,連携に関わる大学側の人的ネットワークに着目し,それらが成果の生産性にどのような影響を及ぼしているのかを社会ネットワーク分析を用いて定量的・実証的に検討する.

ライフライン途絶による経済被害の計量に関する研究 pdf_icon.gif
野崎 諒
<要旨>
今日,企業の生産活動や住民の生活はライフラインに大きく依存している.地震などの災害によりライフラインが途絶された場合,その影響は甚大なものになる.一方で,ライフライン途絶状況においても,他のエネルギーや投入資源で代替するなどの対応策をとることにより,企業の生産活動が完全に停止してしまうわけではない.本研究では,空間的応用一般均衡モデルを用いて,企業が有するレジリエンスおよび災害時の経済状態を考慮し,ライフライン途絶による経済被害を評価する手法を提案する.

中山間地域における高齢者の買い物手段に関する分析 pdf_icon.gif
福元 隆博
<要旨>
近年,過疎化・高齢化の進む中山間地域では買い物弱者が増加しており,移動販売などの支援策が導入・検討されている.しかし,世帯構成や身体能力など,高齢者がおかれている生活環境は多様であり,必要とされる支援も一人ひとり異なると考えられる.よって,買い物支援策を検討する際,高齢者の買い物行動の実態を把握しておくことが重要となる.本研究では,鳥取県の中山間地域を対象に移動販売が導入されて間もない地域での住民の買い物行動について調査より明らかにする.

農産品の地域間交易モデルと災害時の流動特性に関する一考察 pdf_icon.gif
堀江 俊介
<要旨>
我が国では,都市における農産品の生産量・自給率が地方に比べて低く,多くを地方に依存している.これらの生産地を災害が襲った場合,消費地への供給量が減少するなど,影響は甚大なものとなりうる.そこで,本研究では,農産品の生産・供給が時間的(生産時期),空間的(輸送距離)に偏りがあることを念頭に,災害で農産品の供給が一部困難になる状況下で各地域間の流通量と価格の変化に着目し,地域間の特性に関して分析・評価する.

最終更新:2017-04-14 (金) 07:49:49