公共システム研究室(鳥取大学)

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2013年度 修士論文卒業論文はこちらです)

個人の活用可能な資源に着目した公共交通サービスの評価手法 pdf_icon.gif
梅本 貴弘
<要旨>
近年,公共交通の確保が自治体の重要な課題となっている.公共交通を計画するに当たっては,厳しい財政制約のもとで,どのような地域にどれだけの公共交通サービスを供給すべきかを明らかにすることが求められる.このため,サービスを供給する必要性や,現行のサービスを改善する必要性を客観的に評価することが重要である.公共交通サービスは人々の外出を支援する手段であるが,外出に際しては,個人の移動能力や周囲の助力といった内的資源の限界やその活用可能性によって,外的資源である公共交通サービスの必要性は大きく異なる.このため,内的資源と外的資源それぞれの活用可能性を明確にした上で,これらを統合してサービスを評価することが有用となる.そこで本研究では,人々の内的資源と外的資源の活用可能性に着目した公共交通サービスの評価手法を開発するとともに,その手法の有効性を実際の地域に適用して確認する.

高齢者の買い物手段の選択に関する実証分析 pdf_icon.gif
大西 健太
<要旨>
小売業や公共交通機関の撤退・縮小に伴い食料品や生活必需品の購入が困難になる高齢者の増加が懸念されている.このため,そのような人々が生じないようにするための買い物支援サービスの充実が今後は重要となってくる.ただし,買い物支援サービスには移動販売や公共交通などの様々な手段が存在しており,それぞれがどのような高齢者に有効なのかが異なる.特に,高齢になると活動能力の個人差が大きくなるため,どのような手段が有効かは若年・壮年層と比べて大きく異なる.また,個々の手段が高齢者にとってどれほど魅力が高いのかについても手段の有効性に影響を及ぼす.そこで本研究では,高齢者の活動能力に応じた食料品・日用品の買い物手段の選択ならびに買い物手段のサービス水準に応じた選択を離散選択モデルに基づいて定量的に評価するための手法を構築し,どのような手段がどのような個人に有効なのかを実証的に明らかにする.

空間的応用一般均衡分析を用いた大規模災害時の社会基盤施設被災による経済損失評価 pdf_icon.gif
酒見 拓摩
<要旨>
我が国は世界的に見て自然災害が多い国である.適切な防災計画を施すために,特定の地域への災害が日本経済全体あるいは全国の各地域にどの程度影響するのかを事前に評価することが必要である.多地域の枠組みで地域間の産業連関性をとらえて被害の地域別帰着を計測する手法として,空間的応用一般均衡モデル(SCGEモデル)があり,近年,SCGE分析による評価事例が増えてきている.本研究では,SCGEモデルにおいてこれまで得られた知見を統合し,災害の発生により道路や鉄道といった広域社会基盤に生じた機能損傷や,電力・水道・ガスなどのライフライン途絶に対する企業の生産性確保(レジリエンシー)が社会に及ぼす影響を分析しうるモデルとそのモデリングプロセスを提示する.その上で,2004年に発生した新潟県中越地震をシナリオとし,交通機能の低下やライフライン途絶に起因する被害の空間的帰着を推計する.

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2013年度 卒業論文

過疎地域における給油所の持続可能性に関する分析 pdf_icon.gif
池田 達哉
<要旨>
現在わが国の給油所は,全国的な人口減少に伴う売上高の低下により,撤退する店舗が増えている.特に過疎地域では身近な場所で燃料を調達することが困難になっており,従来の給油所の撤退を回避するための対策の検討が各自治体で始まっている.自治体が対策の必要性や有効性を判断するに際して,給油所の持続可能性が評価できれば有用である.そこで本研究では,損益分岐点分析を用いて,持続可能性を評価するための手法を開発するとともに,その手法を実際の地域に適用し,今後の持続可能性を明らかにする.

大規模災害による基幹交通寸断の地域間波及分析 pdf_icon.gif
大矢 信彰
<要旨>
現代の社会経済活動は,発達した交通インフラに支えられて広域に展開されている.人口や資産が集中する都市域における大規模災害は被災地域を超えて,直接的には被災しなかった地域にも波及し,社会経済的影響は深刻なものとなりうる.適切な防災対策を講じるためにもその影響を評価することが重要である.本研究では,空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを用いて,おもに交通インフラに着目しながら,都市域災害が被災地及び周辺地域に及ぼす影響を分析する.

里山整備による経済波及効果分析に関する研究 pdf_icon.gif
垣内 信伍
<要旨>
各産業は,生産に必要な燃料やエネルギーを自地域で賄ったり,域外から購入したりして使用するが,自地域の資源だけで循環させることによって,地域は自立し,活性化すると考えられる.今後,こうした里山資源の有効利用が地域の生活をより豊かにするために重要である.本研究では,製材業から排出される木くずからの発電を想定し,その経済波及効果を産業連関分析により推計する.また,それに伴う雇用者所得の増加による影響も考察する.

利他性を考慮した移動販売業者のサービス提供水準に関する研究 pdf_icon.gif
小西 崇徳
<要旨>
過疎地域における移動販売は,商品の販売に限らず,声かけや安否確認,ちょっとした家事の手伝いなど福祉的サービス機能も担っており,特に外出に制約のある高齢者にとって,その役割は大きくなっている.本研究では,移動販売利用者に対して利他的動機を持ちうる事業者のサービス提供水準に係る意思決定をモデル化し,基本的な経営戦略として,他社との競争のための合理化,及び特定顧客への手厚いサービス,の二つがあることを示す.

災害時の農産品流動推計から見る地域間特性分析 pdf_icon.gif
坂口 卓史
<要旨>
我が国では,都市における農産品の生産量・自給率が地方に比べて低く,多くを地方に依存している.これらの生産地を災害が襲った場合,消費地への供給量が減少するなど,影響は甚大なものとなりうる.そこで,本研究では,農産品の生産・供給が時間的(生産時期),空間的(輸送距離)に偏りがあることを念頭に,災害で農産品の供給が一部困難になる状況下で各地域間の流通量と価格の変化に着目し,地域間の特性に関して分析・評価する.

中山間地域の移動販売業がもたらす生活支援サービス価値の計測 pdf_icon.gif
中川 太郎
<要旨>
近年,過疎地域では,商業施設の撤退や公共交通の衰退などにより買い物難民の増加が懸念されている.このような地域の人々にとって移動販売は重要な生活支援サービスであるが,特に民間業者の場合,事業収支面からの撤退により,サービスがなくなる恐れがある.そこで本研究では,代替サービス費用のベースライン設計のために,鳥取県西部の事例をもとにして現在の移動販売業者が生み出す生活支援サービス価値の計測を試みる

社会資本維持管理の人員削減に伴うリスクの評価に関する研究 pdf_icon.gif
日高 大希
<要旨>
地域における人々の生活を維持するためには,社会資本やライフラインの着実な点検や見回りが重要である.しかし,特に地方では維持管理に当たる人員や時間の削減が進んでいる一方で,それに伴うリスクやコストには多くの関心が向けられていない.そこで本研究では,限られた人員や時間の下での維持管理がもたらす社会的リスクを定量的に評価する手法を開発する.その上で,居住地の範囲の大小がどれだけのリスクの変化をもたらすのかを分析する.

交通政策評価のための交通=経済統合モデルの開発 pdf_icon.gif
前川 浩平
<要旨>
広域交通インフラの整備は地域経済に大きな影響を及ぼすものであり,それゆえ評価の考え方も重要である.交通量に着眼した分析では,均衡配分の考え方に基づき利用者便益を用いて効果的なネットワーク設計のあり方などを議論することが可能であるが,交通が社会・経済活動の派生需要であるという視点が十分には反映されていない.本研究では,交通量配分に一般均衡の枠組みを導入することでこの課題を扱い,統合的アプローチの有用性について検討する.

高齢者の活動能力に応じた移動手段の選択に関する研究 pdf_icon.gif
眞木 悠太
<要旨>
高齢者が安心して日常生活を送るためには,活動能力が低い人であっても外出ができる環境を整えることが重要である.しかし,能力の低下の程度は人によって様々であり,多様な外出手段のどれが有効であるかは高齢者の活動能力や外出手段の特性によって異なる.そこで本研究では,外出に際する一般的な移動手段と買い物の移動手段を対象とし,高齢者の活動能力に応じた移動手段の選択を定量的に評価するための手法を提案する.その上で,各移動手段がどれだけ選択されているのかを実証的に明らかにする.

中山間地域における買い物支援に関する考察 pdf_icon.gif
安田 啓人
<要旨>
「買い物弱者」の増加のため,移動販売などの買い物支援策が検討されている.しかし,高齢者の活動能力,世帯構成は多様であり,どの買い物支援が必要かは属性によって異なる.したがって,買い物支援策を検討する際,高齢者の買い物手段の実態の把握が重要となる.そこで本研究では,中山間地域において買い物支援がどのような人々に利用されているかを統計的に把握した上で,将来の買い物支援策に関するニーズがどのように推移するのかを実証的に明らかにする.

最終更新:2016-09-28 (水) 16:27:38