公共システム研究室(鳥取大学)

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2012年度 修士論文卒業論文はこちらです)

生活関連サービスの兼業・複合的供給による影響評価 pdf_icon.gif
高政 和輝
<要旨>
地方では人口減少が著しいものになっている.この背景のもと,定住人口の確保が自治体にとっての課題となっており,商店などの基礎的な生活のための関連施設が身近にあることが重要である.しかし,人口減少に伴って生活関連施設の利用者数が減少し,これらの維持が経営的に困難になり,地域からの撤退が懸念される.そこで,従来は個々の運営主体が供給してきたそれぞれのサービスを統合し,兼業・複合的にサービスを提供することで経費を効率化し,サービスの維持可能性を向上することができると考えられる.しかし,兼業・複合的サービスの供給が,サービスの維持可能性に,具体的にどの程度の効果があるかは不透明である.加えて,サービス利用者にとっては待ち時間の増加などの影響を及ぼすかもしれない.そこで本研究では,生活関連サービスの兼業・複合的な供給方策を導入した場合における,供給者と利用者の双方への影響の分析手法について検討する.

選択の自由に着目した活動機会の計測に関する研究 pdf_icon.gif
谷 雅幸
<要旨>
 近年,買い物難民や交通弱者といった言葉があるように,人々が居住している場所から身近な範囲で日常的な活動を実施することが困難となっている.今後も人口減少や高齢化の進行が予想されることから,生活の活動機会を保障するための様々なサービスを検討することが社会的な課題となっている.その際,限られた財源のもとで有効なサービスを見出すことが不可欠であるため,それぞれのサービスがどれだけの活動機会を保障しうるのかを定量的に把握することが必要となる.そこで本研究では,社会選択理論における研究蓄積をベースに,人々に保障される活動機会を選択の自由の観点から計測する手法を検討する.具体的には,活動機会に含まれる選択肢に関する人々の選好,ならびに,選択肢の多様性を反映したアプローチを踏まえ,実行可能な選択肢の個数を活動機会の単位として計測するようにし,計測値の理解を容易とする工夫を講じる.

高齢者の態様に着目した生活機能の 確保手段の選択構造に関する研究 pdf_icon.gif
松島 充洸
<要旨>
高齢社会では,買い物や診察といった高齢者にとって基礎的な生活機能を支えるための手段を確保することが重要な課題となる.生活機能を確保するための手段としては,自らが外出する,供給者が出張して自宅近くでサービスを提供する,家族や近所の人に依頼するなど様々が考えられる.しかし,高齢者の態様には個人差が大きいため,どのような手段が有効かはどのような態様をもつ人であるかに依存する.そこで本研究では,高齢者の態様として個人の身体能力や家族構成に着目し,それぞれの態様をもつ人にとってどの手段が有効なのかを明らかにする.その際,実際においては本人は必ずしも有効な手段を選択しているのではなく,態様に応じた次善の手段を選択している可能性を明示的に考慮するために,イベントツリーを用いた階層的な選択構造を仮定し,調査データを用いてその構造を特定化する.その上で,ある地域を対象に,今後どの手段の提供が有効かを数値例により示す.

複数の主体の連携による社会資本の維持管理方策に関するモデル分析 pdf_icon.gif
宮本 慎也
<要旨>
多くの地方自治体では,人口減少による税収の減少に伴い社会資本の維持管理に支出できる予算の減少が見込まれているため,効率的な社会資本の維持管理が課題となっている.従来の社会資本の維持管理は,基本的には,単独の管理主体が行うことを想定している.しかし,例えば,自治体内の関連部署がタイミングを合わせて共通する工事を実施することや,複数の自治体が資金を貸借しあうことで年度ごとの資金の過不足を調整するといったように,複数の主体が連携することで維持管理コストの縮減が期待できる.しかし,連携を前提とした場合,それぞれの主体が具体的にどのような維持管理方策を実施すればよいかの判断はより一層困難となる.そこで,本研究では,複数の主体が連携して維持管理するいくつかの状況をモデル化し,ライフサイクルコストが最小となる維持管理方策を導出する手法を検討する.その上で事例分析を行い,連携の有効性を定量的に評価する.

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2012年度 卒業論文

国内地域間交易モデルの定式化に関する一考察 pdf_icon.gif
井上 貴博
<要旨>
多地域応用一般均衡モデルで用いられる地域間交易モデルの中には,i)従前の定式化においては方程式体系の価格に関するゼロ次同次性を満たさないものがある,ii)交易モデルの定式化は交易財の地域間代替に係る弾力性値に関係するが,これについて研究の蓄積が十分ではない,という課題がある.そこで,本研究では,地域間交易モデルのパラメータ推定を通して,推定されるモデルが異なる空間的条件(広域エリア,狭域エリア,広域・狭域混合等)によってどのように変化するかを把握することを目的とする.

高齢社会におけるパーソナルモビリティのニーズ分析 pdf_icon.gif
遠藤 綾
<要旨>
現在,我が国においては高齢化が急速に進行し, 今後も多くの地域で高齢者の割合が増えることが確実視されている.一般に,人々は高齢化に伴う体力の低下により,移動に制約を受ける.この問題を解決し,高齢者のQOL(Quality of life)の向上に資する方策の一つとして,パーソナルモビリティ(Personal Mobility,以下PM)の普及があげられる.本研究では,鳥取県大山町の高齢者を対象としたアンケート調査からPM へのニーズを把握し,高齢者のどのような要因がPM ニーズに影響を与えているのかを分析することを目的としている

港湾の機能停止による国際経済への影響分析 pdf_icon.gif
北野 裕也
<要旨>
国際貿易のおもな交通手段は船舶であり,それゆえ港湾は貿易国にとって重要なインフラ施設である.したがって,災害による港湾の被災は被災国,貿易相手国を中心として国際経済に影響を及ぼす可能性があり,適切な防災対策を講じるためにもその影響を評価することが重要である.本研究では,空間的応用一般均衡モデルを用いて,地域(国)における生産・消費と国際貿易という国際経済のメカニズムを定式化し,港湾が機能停止に陥った場合の影響を定量的に分析する.その際,想定する被災国で代替港湾の利用に伴って生じうる陸上輸送の変化,生産地の変化に着目し,モデル化を行う.

ライフライン途絶に対する地域産業のレジリエンス分析に関する研究 pdf_icon.gif
児玉 祐樹
<要旨>
今日の社会は,水道・電力・ガスなどのライフラインに大きく依存しているため,地震等の災害によりこれらが途絶すると経済活動に大きな影響が及ぶ.経済被害を軽減するためにも企業は,設備の耐震補強やバックアップ機能の強化など効果的な施策を実施していくことが重要である.そのためには,ライフラインが途絶した際の影響を定量的に評価する必要がある.本研究では,企業活動におけるライフライン途絶への耐性(レジリエンシー)に着目し,中越地震後に被災地事業所を対象に行った調査データを用いて,企業のレジリエンシー特性を評価する.

経済活動を考慮した都市部道路ネットワークの設計に関する研究 pdf_icon.gif
近藤 諒学
<要旨>
大規模災害による経済損失を軽減するために,交通網の整備の観点では,ネットワークの多重性,すなわちリダンダンシーの確保が大きなキーワードの一つとなっている.交通流に着眼した分析では,均衡配分の考え方に基づき利用者便益(利用者損失)を用いて効果的なネットワーク設計のあり方を議論することが可能であるが,交通が社会・経済活動の派生需要であるという視点が十分には反映されていない.本研究では,交通量の配分を考える際に,一般均衡の枠組みを導入することでこの問題を解決し,神戸市の実ネットワークを対象とした分析を通して,最適なネットワーク設計のあり方について知見を得る

高齢者の機能的健康と移動手段に関する研究 pdf_icon.gif
高長 良行
<要旨>
高齢社会では,公共交通の役割がより一層重要になると言われている.その一つの理由として,高齢になると機能的な健康が一般に低下するため,高度な運動,判断能力を要する移動手段から公共交通に転換することが考えられる.もう一つが,公共交通の利用に際しては適度な運動,判断能力を行使するため,健康維持の観点で有効であることも考えられる.しかし,これらは検証されていない.そこで本研究では,高齢者の機能的健康と公共交通を中心とした移動手段の関係について実証的に検討する.

高齢者の生活支援サービスに関するニーズ分析 −訪問・出張型サービスに着目して− pdf_icon.gif
仁志出 尚希
<要旨>
現代は,高齢者の人口は年々増加している.高齢になると家事や移動などの日常活動が困難になり,周囲の助力が必要になると思われる.そのため,介護・介助とは異なる,日常活動に対する生活支援サービスが必要になることが予想される.これらの生活支援サービスへのニーズは,高齢者の健康状態による助力の必要性,家族構成による日常活動の助力の得られやすさ,また,性別などの要因によって変化する.そこで,これらの違いによってどのような生活支援サービスに,どの程度のニーズがあるかを定量的に把握することを目的とする.

中山間地域における買い物支援サービスの持続可能性に関する研究 pdf_icon.gif
西村 光法
<要旨>
近年,中山間地域では人口減少による商業施設の撤退や公共交通の衰退などにより,日常の買い物に困難が生じている.このような地域に住む買い物弱者へのサービス形態の一つに移動販売があるが,特に民間の移動販売業者にとっては,事業収支が成り立たなければサービスを維持することが困難であり,業者の地域撤退は地域の衰退を招く恐れがある.本研究では,鳥取県のある地域を対象としたアンケート調査から移動販売の利用実態を把握し,事業継続性に関わる将来予測を行うことで,地域住民の生活における買い物支援のあり方について検討する.

災害時における農産品の輸送に着目した 地方の重要性に関する研究 pdf_icon.gif
橋本 悠真
<要旨>
我が国では,農産品の大部分が地方で生産されており,これらの生産地を災害が襲った場合,都市部などの消費地に対する影響は甚大なものとなりうる.また,農産品の生産・供給は時間的(生産時期),空間的(生産地)に偏りがあり,災害の発生時期や発生場所によって消費地への影響は大きく異なる可能性がある.そこで本研究では,災害により農産品の供給が一部困難になる状況を想定し,災害前後における流通量を比較することで地方の重要性について評価する.

地域の持続的発展を考慮した観光資源の保全管理方策に関する研究 pdf_icon.gif
濱千代 悠太
<要旨>
国立公園のように自然環境を資源とする観光業は,開発による価値創出の一方で資源の適切な保全が重要である.一時的な観光客の増加を見込んだ観光資源開発は,長期的にはその地域の資源が減耗し,その帰結としての地域の魅力および観光客の減少により,地域の衰退を招く恐れがある.本研究では,この問題をモデル化し,考えられる複数の保全管理方策について,それらが中長期的に地域にもたらす効果を分析することで,保全管理方策に関する知見を得ることを目的とする.

公共交通サービスの阻害認識に関する発現解析 pdf_icon.gif
的場 勇人
<要旨>
公共交通サービスは,人々の日常生活を支える重要な交通手段の一つであるものの,利用しづらいとの声は少なくない.サービスの利用のしづらさには時間的,経済的,身体的な負担などに起因する様々な阻害要因が考えられるが,阻害の客観的な程度に応じた主観的な阻害認識の発現の関係を把握することができれば,阻害の認識を抑えた利用しやすいサービスの検討に有用である.そこで本研究では,様々な阻害要因を取り上げ,離散反応モデルを用いて利用者の身体能力や利用環境との関係に着目し,阻害認識の発現を実証的に解析する.

最終更新:2016-09-28 (水) 16:27:38