2006年度 修士論文（卒業論文はこちらです)
航空機利用者の選好を考慮した路線バス型フライトの導入可能性に関する研究 
野田 亮
わが国の航空路線は羽田と他の空港を結ぶ直行路線が一般的であるが，地方都市と地方中枢都市あるいは地方都市相互を結ぶ路線の中には，2006年7月に廃止された鳥取−名古屋路線のように需要密度が低く採算性の確保が困難なものも数多く存在する．需要密度が低い都市間で航空路線を維持・開設する一つの方法として，例えば，米子−鳥取−名古屋のように同一方向を結ぶ複数の航空路線を取りまとめて需要を集約し，途中寄港しながら直列に結んだ都市間を運航する“路線バス型フライト”が提案されている．しかし，従来の研究では，路線バス型フライトの導入に伴って生じる迂回や早朝・深夜の離発着に対する利用者の選好が明らかにされておらず，利用に及ぼす影響も考慮されていない．そこで，本研究では，路線バス型フライトの導入に伴う上記の影響を意識調査等により明らかにするとともに，鳥取空港を事例として路線バス型フライトの導入可能性を検討する．
送水システムにおける補修の意思決定モデルに関する研究
清水 尚也
現在、多くの地域で送水管の老朽化が危惧されており、送水システムの補修、点検を実施することが求められている．しかし、それらの実施には工事費や工事期間中における断水などの社会的影響を伴う．したがって、送水システムを維持管理するためには、どの程度の劣化状態で補修するのか、どれだけ状態を改善するのかを検討し，最も有効な政策を見い出す必要がある．そこで本研究では、補修の意思決定問題をマルコフ決定過程を用いてモデル化し、導出される維持管理政策の性質を明らかにする．
公共交通計画におけるアクセシビリティ指標の比較分析
神山 結圭
一般に公共交通は運行経路および時刻が固定されているため，実行可能な個人の活動パターンが制約を受ける．時空間プリズムの概念を拡張することでこの点を明示的に考慮したアクセシビリティ指標が近年提案されているものの，その計算には若干の技術的な困難を伴う．そこで本研究では，従来から用いられ，かつ実用的な指標として，所与の移動距離内で到達可能な施設やサービスの数を評価する指標を取り上げ，それらを数え上げる際に上記の制約を反映することでこの制約を明示的に考慮した指標にどれだけ接近しうるかを実証的に検討する．これにより，従来の実用的な指標の修正によって公共交通の制約を考慮しうる可能性をについて明らかにする．
活動機会の保障に着目した公共交通のシビルミニマム水準に関する研究
小栗 圭子
自家用車の普及により, 公共交通の利用者数は減少の一途を辿っている. このため, 事業者は運行費用に見合う収入を得られず, 自治体の公的支出なしに公共交通のサービスを維持することは困難となっている. しかし, 公共交通は自家用車を利用できない人々の生活活動を支えており, サービス水準の切り下げはその人々の生活に困窮をもたらす. 本研究では, 公共交通の利用者が通院や買い物などの基礎的な生活活動を実行できる最低限のサービスをシビルミニマム水準として導出する方法論を確立するとともに, 岡山県真庭市を対象にその適用を試みる.
過疎地域における定住の意向と生活機能に関する研究
新宅 基紀
現在，過疎的な集落を抱える多くの自治体においては，定住人口の確保が重要な課題となっている．人々の定住を促すには，十分な生活水準を保障することが有効であるが，財政基盤が貧弱であることにより，その実行可能性は低い．このため，定住にとって重要な生活機能が何であるか，また各々の機能が定住に及ぼす影響の差異はどの程度かを把握し，施策を講じていくことが，どの自治体にも共通する関心となっている．本研究では，住民へのアンケート調査により生活機能の要素を明確化し，生活機能が定住の意向に及ぼす影響を明らかにする．
生活基盤サービスの提供における公共交通サービスの分担範囲に関する考察
中田 瑛子
過疎地域ではバス路線の維持が困難な状況が多く見られる．生活基盤サービスの提供に際して，住民が路線バスを利用してサービス提供地点に出向くことを前提とした方法が全ての地域で効率的であるとは限らず，むしろ提供者が住民の居住地に出向く方が効率的な場合もある．そこで本研究では，種々のサービスの提供方法を効率性の観点から比較し，公共交通サービスを介して確保すべき生活基盤サービスの分担範囲を明らかにするための方法論について考察する．
