公共システム研究室(鳥取大学)

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主体相互の水融通による渇水リスク軽減方策に関する研究
大熊 慶之
 現代社会における生活,生産活動にとって安定的な水供給は必要不可欠であり,これまでダムなどの水資源開発施設の整備によってその実現に寄与してきた.しかしながら,豊富な降水量に恵まれない年には幾つかの流域で渇水が発生する現状にある.渇水時における対応策としては,河川等からの取水制限や給水圧の調整,他用途からの緊急的な水融通などがあり,とりわけ他用途からの水融通は積極的に実施すべきとの社会的要請が大きい.しかしながら,融通の当事者間の合意や水利権等の制約により,これまで必ずしも円滑に行われてきたとは言い難い.しかしもし,渇水による被害が発生する以前に用途間で水融通の契約が行えたとすれば,未然に渇水による被害を回避できるのではないかと考えられる.そこで,本研究では渇水による被害を回避する手段として主体相互による水融通の契約を考え,契約の導入によって渇水被害がどれだけ軽減されるかについての考察を行う.


地方空港の路線誘致行動に関する一考察
坂田 裕彦
 航空規制緩和の進展と競争の激化を受け,自治体はより利便性の高い航空旅客サービスを実現するために,路線誘致行動を活発に展開している.路線誘致行動は,他の自治体の行動が,自己の行動に影響を及ぼし,同様に自己の行動が他の自治体の行動に影響を及ぼすような相互依存の関係にある.また,自治体の路線誘致は一度限りで終了するのではなく,何度も誘致を繰り返すことで,よりサービス水準の高い路線を実現しようとするものである.ある自治体が,短期的に高い航空旅客サービス水準を実現しようとして,必ずしも長期的にも高いサービス水準を実現するとは言えない.最適なネットワークの形成行動はそれまでの行動結果に依存するため,近視眼的な状況判断は今後の誘致行動に不利な状況を招く恐れがある.そこで本研究では,自治体の路線誘致行動におけるネットワーク形成過程を非協力ゲームの繰り返しによって分析し,効果的な路線誘致行動を見出すためのひとつの方法論を提案する.


複数均衡解をもつゲームの逆解析法に関する研究
高橋 良平
 非協力ゲームにおける均衡解選択問題については,複数の均衡解から唯一の解を選択するための様々な仮説が立てられているが,現在のところ確立された理論は得られていない.その原因として,どの均衡解が選択されたかについて実証するデータが存在しないことが挙げられる.本研究では,均質な選好構造を有する多数のプレイヤーが同時並行的に行ったゲームの結果から得た観測データに基づき,プレイヤーの利得関数を推定する「ゲームの利得推定法」を拡張し,利得関数のパラメータと各均衡解が選択される確率を同時に推定する方法を提案する.また,このモデルを高速道路流入部で観測した流入避走行動のデータに適用し,モデルの有用性を実証的に検討する.これにより,どの選択基準がプレイヤーによって用いられるかを実証面から明らかにすることができ,プレイヤーを取り巻くゲームの状況と選択基準との関連付けが可能となると考えられる.


不完備情報下における地方公共財の分権的供給に関する研究
西口 健太郎
 地方分権の進展により,地方自治体が自らの裁量によって自地域住民の選好に合ったより特色のある地方行政が行われると期待される.一方で,地方自治体の裁量の拡大は公共サービスの提供に関する地域間の競争をもたらし,「他地域の公共サービスへのただ乗り」といった地方自治体の戦略的な誘引に起因した地方公共サービスの過少供給が発生する危険が指摘されている.さらに,他地域がどのような地方公共サービスを望み,提供するのかは事前には完全に把握できないのが現状であろう.このような「不完備情報」の下での複数地方自治体による「分権的」意思決定は,地方公共サービス供給に関して国全体として非常に非効率な状態をもたらす可能性がある.本研究では,他地域の地方公共サービスに関する選好を知り得ない2地域による分権的公共サービス供給の結果生ずる非効率性をモデル分析により明らかにする.さらに,中央政府の税・補助金による介入が非効率性に与える影響を分析する.


ドライバーの交通ルール認識に着目した交通安全方策の効果分析 ―ロータリーを例に―
橋本 和茂
 「ドライバーのルール認識に着目した交通安全方策の効果分析- ロータリーを例に -」橋本和茂ドライバーの運転意識や交通安全運動等の方策と交通状況の関係については未解明な部分が多く,運転意識等の向上による交通状況の改善を目的とした現行の諸方策はその効果が必ずしも明らかではない.本研究では,ロータリーの合流部を対象として,ドライバー間で優先権認識や安全運転意識が相違している状況を想定し,認識等の違いや方策の実施が交通状況に及ぼす影響を明らかにする.具体的には,ドライバーは他のドライバーの運転行動を考慮して運転行動を選択するというゲーム的状況を繰り返し経験し,周囲のドライバーの運転行動に依存して運転行動のみならず優先権認識までも変化させると考える.このような観点からドライバーの運転行動をモデル化して優先権認識や運転行動の変化を考慮したシミュレーションモデルを構築し,優先権認識や安全運転意識の相違が交通状況に及ぼす影響,方策による優先権認識や安全運転意識の向上が交通状況に及ぼす影響を明らかにする.

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2000年度 卒業論文

罰則制度がドライバーの危険運転行動に与える影響に関する分析
出口 宏季
 わが国の自動車交通は急速な発展を遂げてきた.車の操縦性能や安全性能が向上している一方で,交通事故が大きく減少する様子を見せていない.事故減少のためにはドライバーの運転意識の向上による安全な運転を促すことが必要不可欠と考えられる.本研究では,運転者の運転意識の違いが事故発生に与える影響に着目し,ドライバーの危険運転行動の減少と社会全体の事故危険性の低下を目指した罰則制度の効果をモデル分析する.


防災投資の対象とすべき極少頻度巨大災害の設定上限規模に関する研究
木下 直大
 すべての巨大災害に対応しようとして過大な防災投資を行うと住民の日常生活に支障をきたす可能性があるが、逆に過小な防災投資では被災時に地域社会が崩壊する恐れがある.本研究では,被災しても地域社会が維持できる限りいずれは復興できるとの考えに基づき,住民が地域社会の崩壊を避けるために投じてもよいと考える防災投資によって対応しうる災害規模の上限に着目し,防災対策で対象とすべき設計地震動の設定法を開発する.


地域住民の利便性に着目した過疎バスのサービス水準評価
有田 和人
 路線バスを核とする生活交通確保方策を検討する上で,バスのサービス水準評価が不可欠である.通常,バスのサービス水準は便数で評価されるが,過疎地域では1日の便数が少ないため便数のみでは十分評価しえない.そこで本研究では,1日の活動に費やす時間配分と待ち時間に着目して住民の属性別活動パターンごとにバスダイヤの利便性を定量的に評価するモデルを提案するとともに,行動実態調査に基づきモデルの妥当性を検証する.


住民の発言行動に着目した合意形成の場の運営方策に関する研究
忍田 国大
 公共事業の是非を住民の間で集約するための合意形成においては,場の雰囲気に依存して住民が発言しうるため,事業者は住民の真意を適切に抽出できない危険性がある.本研究では事業に対する「賛成」「反対」の真意をもつ2つのタイプの住民を想定して,他の住民の発言に関する学習プロセスの下で自らの発言を選択する合意形成の推移過程をモデル化し,真意を発言できる状況を内発的に実現するための方策を取り上げ,その導入効果について検討する.


地方公共サービスの分権的供給の公平性に関する研究
西 隆太朗
 地方分権下において,各地方自治体が自地域住民のみを考慮して公共サービスの供給量を決定すると,生活圏全体としてサービス供給が非効率になる.そのため,中央政府の税や補助金による介入の必要性が指摘されている.しかし,中央政府の介入は各自治体の財政と意思決定に不均一な影響を与え,地域間に新たな不公平の問題をもたらす可能性がある.本研究では,効率性向上を目指した中央政府の介入が地域の公平性に与える影響をモデル分析する.


不確実な費用の下での共同プロジェクトの成立可能性に関するゲーム論的研究
西岡 武志
 社会資本整備事業の多くは,その計画段階において事業費用は不確実である.そのため,共同事業における事業参加主体は配分費用の変動に起因するリスクを回避することを目的として,費用配分ルールの交渉を行うと考えられる.しかし,事業参加が拘束的でない場合,どの主体と共同事業を行うかについても各主体は自発的に意思決定する必要がある.そこで本研究では,費用の不確実な状況下における提携形成のメカニズムをモデル化し,提携の安定性及び効率性について検討する.


オンランプ流入部設計のための車線利用率推定法
原口 晃
 高速道路流入部における現行の幾何構造設計指針では上流端における車線利用率を外生的に与えているが,車線利用率は設計しようとする流入部の道路・交通特性に依存するため両者は一体的に検討されるべきである.しかし,流入部上流端の車線利用率を流入部の諸特性と関連づけて推定する方法はまだ構築されていない.そこで本研究では,ゲーム理論に基づく先行避走行動モデルを改良し,流入部の道路・交通特性を踏まえた車線利用率の推定法を提案する.


災害時における水供給システムの性能評価に関する研究
山本 昌慶
 地震時の水供給システムの性能は従来個々の供給手段の整備量で評価してきたが,本来は利用者の利便性に基づくべきである.利便性は利用者の個人属性や被災時の復旧戦略に依存することから,それを組み込んだ評価方法が必要となる.また,水供給システムは複数の配水区域から構成されるため,区域間での公平性を図る必要がある.本研究では,ある公平性の規範の下で利用者の視点から最も高い性能を発揮する水供給手段と復旧戦略の組み合わせをモデル分析する.


複数の自治体にまたがる広域バス路線の補助金負担方式に関するモデル分析
米村 圭一郎
 地震時の水供給システムの性能は従来個々の供給手段の整備量で評価してきたが,本来は利用者の利便性に基づくべきである.利便性は利用者の個人属性や被災時の復旧戦略に依存することから,それを組み込んだ評価方法が必要となる.また,水供給システムは複数の配水区域から構成されるため,区域間での公平性を図る必要がある.本研究では,ある公平性の規範の下で利用者の視点から最も高い性能を発揮する水供給手段と復旧戦略の組み合わせをモデル分析する.

最終更新:2016-09-28 (水) 16:27:38